ターナー症候群とは?特徴や診断された時の考え方を解説
ターナー症候群とは、女性にのみ見られる染色体異常の一つです。
染色体異常と診断されると、今後生まれてくるお子様のためにどのような準備を行っていけばいいのか・・と思うかもしれませんが、ターナー症候群は、ひとつの個性としてとらえられるような症候群です。
今回はそんなターナー症候群について徹底的に解説していきます。
診断された時の親御さんの気持ちの持ち方なども紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
ターナー症候群(モノソミーX)とは?
ターナー症候群とは、別名モノソミーXとも呼ばれる染色体の異常です。
男女の性別を決める染色体の異常によって起こり、女児にしか起こりません。特徴は、低身長や性発達の遅れです。
ターナー症候群と聞くと不安になるかもしれませんが、適切な対応を行えば命に別状はなく、アレルギーなどと同じような「体質」の一つとして考えられています。また、病気というイメージばかり広まらないように、ターナー女性と呼ぶこともあります。
ターナー症候群(モノソミーX)の原因
人間には染色体と呼ばれるDNAの情報を束ねたものが46本あり、そのうちの44本は常染色体と呼ばれるもので、残りの2本が性染色体と呼ばれます。この2本の性染色体を受け継ぐ際に、片方の一部または全体が欠けてしまうことで、ターナー症候群は発症します。
この現象は女性なら誰にでも起こりうることで、完全に偶然と言えるものです。
ターナー症候群(モノソミーX)の特徴
ターナー症候群は、見た目に以下のような特徴が現れます。
- 低身長
- 翼状頸
- リンパ浮腫
- 外反肘
低身長
ターナー症候群と診断された方は、ほぼ低身長の特徴が現れます。
比較してみると、日本人女性の平均身長が約158cmなのに対して、ターナー症候群の方の平均身長は約139cmです。
ただ、ホルモン治療を受けた場合の平均は約147cmとなっているので、治療でかなり身長が変わってくることが伺えます。
翼状頸
ターナー症候群の方は、翼状頸という特徴も発症することが多いです。翼状頸とは、首筋に翼のような余分な皮膚がついていることで、首が太く見える症状のことです。
リンパ浮腫
リンパ浮腫とは、手の甲や足の甲が腫れてしまう症状です。リンパ液が溜まることで、むくんだ状態が続きます。
むくんだ部分が重く感じることもあり、関節に近い部分がむくんでしまうと、生活の質に支障が出ることもしばしばです。
外反肘
外反肘とは、腕の肘の部分から先が外側を向いている症状です。
多少見た目に差は出ますが、痛みなどは伴いません。
その他の症状
これらの症状の他にも、
- 耳の変形
- うなじの生え際が低い
- 下あごが小さい
- 口の中の天井が高い
- 胸の幅が広い
- 爪が小さくて柔らかい
- 指が少し短い
- ほくろが多い
といった症状が見られます。
ターナー症候群(モノソミーX)の症状
ターナー症候群では、以下のような症状が現れます。
- 性発達の遅れ(思春期以降に月経が来ない)
- 不妊
- 学習障害
ただし、ターナー症候群全ての人にこれらの症状が現れるわけではありません。
さらに個人差も大きく、成長してからターナー症候群に気づくこともあります。学習障害に関してはほとんど現れることはないです。
不妊症に関しては90%の人が発症しますが、個人差も大きく、稀に赤ちゃんを授かる人もいます。
ターナー症候群(モノソミーX)の合併症
ターナー症候群は、以下のような合併症が現れることがあります。
- 脊柱側湾症
- 骨粗鬆症と骨折
- 高血圧
- 難聴
- 腎臓異常
- 糖尿病
- 発育成股関節形成不全
- 大動脈縮搾症
- 性腺悪性腫瘍
- 自己免疫疾患
- セリアック病
脊柱側湾症
脊柱側湾症とは、背骨が左右に曲がってしまう病気です。
ターナー症候群の人は、青年期に10%の確率で発症します。
発症した場合の生活への影響は、呼吸器への圧迫による痛みなどです。
骨粗鬆症と骨折
骨粗鬆症とは骨の密度が低くなり、スカスカになる病気です。
骨の強度が低くなるため、小さな刺激でも骨折しやすくなります。
歳を重ねると老化による骨密度の低下も見られるので、早い段階での対処が求められます。
高血圧
ターナー症候群の方は、高血圧になりやすいです。
高血圧によって、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞に繋がることもあります。
高血圧は、生活習慣病とも呼ばれ、日々の不摂生が原因となることが多いので、ターナー症候群の方は、できるだけ健康的な習慣を送るようにしましょう。
難聴
ターナー症候群の方は中耳炎になりやすいと言われています。
中耳炎に繰り返しなると難聴になりやすくなるので、注意が必要です。
腎臓異常
ターナー症候群の方は、稀に腎臓の形が健常者と異なるという報告がされています。
腎奇形とも呼ばれ、腎不全の原因になります。
糖尿病
ターナー症候群の方は、糖尿病になるリスクも健常者より高いです。
糖尿病は血糖値を下げるインスリンが働きにくいことによって、高血糖になってしまう病気のことを指します。
症状として、心臓病や脳卒中、失明や足の切断などを引き起こす恐れがあります。
発育性股関節形成不全
発育性股関節形成不全は、赤ちゃんの股関節が発育の段階で脱臼してしまう病気です。
幼い頃に発現しやすく、赤ちゃんのうちは上手に歩くことが難しかったりします。
大動脈縮搾症
大動脈縮搾症は、心臓から出る血管が途中で細くなっている病気です。
主に現れる症状は、高血圧です。
高血圧によって、
- 脳出血
- 脳梗塞
- 心不全
といったリスクがあるので、注意が必要になります。
性腺悪性腫瘍
性腺悪性腫瘍とは、小児ガンの一つです。
ターナー症候群の方は卵巣にガンができやすく、放っておくと骨盤や骨盤の外にまで進行していきます。
ですので、早期発見が重要になります。
自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、免疫の異常で自分自身を攻撃してしまう病気です。ターナー症候群というだけでも発症確率は上がりますが、他の染色体異常を持っているとさらに発症率は高まります。
セリアック病
セリアック病とは、グルテンを含む食べ物を食べた時に腸の粘膜に炎症が出てしまう病気です。
グルテンは小麦に含まれているため、パンやパスタを食べると発症します。
主な症状は以下の通りです。
- 低栄養による成長不良
- 満腹感を感じやすい
- 体重が減る
- 下痢
ただ、お米や蕎麦など、グルテンを含まない食べ物もたくさんありますので、他の病気に比べて対処は簡単です。
ターナー症候群(モノソミーX)の対処法
ターナー症候群は病気ではなく生まれつきのアレルギーのような性質を持っているので、完全な治療は難しいです。
しかし、ターナー症候群は生きていく上で重篤な症状があるわけではなく、多くのターナー症候群の方は普通に生活を送っています。
上記で書いた合併症も、健常者よりも少し発症リスクが高いだけで、必ずなるわけではありません。
また、以下のような対処法を施すことで、症状の緩和や予防を施すことができます。
- 成長ホルモン療法
- エストロゲン療法
- 不妊治療
- 定期的な検診
成長ホルモン療法
成長ホルモン療法とは、ターナー症候群の低身長に対して行われる治療です。成長ホルモンを投与することで、平均身長を145cm以上に伸ばすことができますが、体質によって、痙攣や頭痛などの副作用が現れることがあるので注意が必要です。
ちなみに、男性の例になってしまいますが、サッカーで有名なリオネル・メッシ選手も成長ホルモン療法で身長を伸ばしていたようです。
エストロゲン療法
エストロゲン療法とは、女性ホルモンを投与することで思春期を来させ、第二次性徴を促す治療法です。
女性の二次性徴は、
- 体つきが丸みを帯びる
- 初経
- 乳房の発達
- 子宮の発達
といった発育が見られます。
特に思春期は、周りとの違いが気になる時期でもあるので、本人の意向に沿って治療してあげることが大切です。
不妊治療
ターナー症候群の方で最も気になるのが不妊だと思います。
90%のターナー症候群の女性が不妊の症状が現れるので、ほとんど妊娠できないといっても良いでしょう。
ですが現在不妊治療は進歩しており、卵子提供によって妊娠できる確率が高まっています。
卵子提供を考えているなら、妊娠に耐えうる体を作っておく必要があるため、エストロゲン治療をしておく必要があります。
卵子提供とは
卵子提供とは、女性の卵子がない場合に行う不妊治療の一つです。卵子提供者から卵子の提供を受けて、ご主人と体外受精した後に、奥様の子宮に受精卵を移植します。
移植した後は、一般的な妊婦さんと同様に妊娠と出産が可能です。
定期的な検診
定期的な検診の重要性は誰にでも当てはまることですが、特にターナー症候群の女性にとっては一段と重要なものになります。
ターナー症候群の女性は合併症のリスクが高く、いつどの病気が発症してもおかしくありません。ですので、できるだけ早期に異常を突き止めることが重要です。
そのためには、信頼できるお医者さんのもとへ、定期的に通って検診を受ける必要があります。
ターナー症候群(モノソミーX)の検査方法
ターナー症候群は、出生前検査で発見することが可能です。
出生前検査には、非確定的検査と確定的検査の二種類があります。
非確定的検査
非確定的検査は、疾病の「可能性」を調べる検査です。
そのため、非確定的検査で陽性になっても、100%疾病であるとは限りません。
以下のようなものが、代表的な非確定的検査として挙げられます。
- 超音波検査(エコー検査)
- 母体血清マーカー検査
- コンバインド検査
- NIPT(新型出生前検査)
非確定的検査は、お母さんの血液を採取して検査するので、赤ちゃんにかかる負担を最小限に抑えることが可能です。
確定的検査
確定的検査とは、赤ちゃんの遺伝子異常の有無を確定させる検査のことです。
つまり、確定的検査で出た結果は、まず間違いないということ。
代表的な確定的検査は、以下の二つです。
- 絨毛検査
- 羊水検査
確定的検査は、遺伝子異常を確定させることができますが、お腹に針を刺して行うため赤ちゃんと母体にかかる負担は大きくなります。
ターナー症候群(モノソミーX)のサポート環境
ターナー症候群の治療を行おうと思うと、ホルモン治療などが必要になるため、高額の医療費がかかってきます。
ですが、ターナー症候群は小児慢性特定疾病に指定されているため、医療費の助成を受けることが可能です。
助成による自己負担額の上限は両親の年収によって変わってくるので、以下の表を参考にしてください。
年収の目安 | 自己負担額 |
---|---|
生活保護等 | 0円 |
〜80万円 | 一般、重症ともに1,250円、人工呼吸器装着者500円 |
〜200万円 | 一般、重症ともに2,500円、人工呼吸器装着者500円 |
〜430万円 | 一般5,000円、重症2,500円、人工呼吸器装着者500円 |
〜850万円 | 一般10,000円、重症5,000円、人工呼吸器装着者500円 |
850万円〜 | 一般15,000円、重症10,000円、人工呼吸器装着者500円 |
入院時の食費 | 1/2自己負担 |
ターナー症候群(モノソミーX)のサポート団体
ターナー症候群は本人で自覚できない場合も多く、親御さんがどのように子供に伝えるのかも大きな問題です。
そのような問題が発生したときに、相談できる場所があったら安心ですよね?
「ターナー女性と家族の会」は、ターナー女性が悩みを何でも相談できるコミュニティです。
もし、ターナー症候群のことで心配事や悩み事があれば、ぜひ一度ターナー女性と家族の会に連絡してみてください。
何事も一人で抱え込みすぎないことが重要です。
子供がターナー症候群だと分かった時の考え方
自分の子供に疾患があると分かったときは、心配な気持ちになるのも事実。
でも実は、ターナー症候群という名前の怖さとは裏腹に、普通に生きていく上ではあまり支障がない疾病です。
逆に親御さんがそのことを気にしすぎてしまうとお子さんに心配が伝わってしまい、子供も不安になってしまうことのほうがリスクです。
疾病を抱えていることや合併症のリスクを話すのは、ある程度心身ともに成長した後でも大丈夫ですから、それまではお子さんに不安を感じさせずに、最大限の愛情を持って接してあげてください。
気にするのはほどほどに、悩んだら相談しよう
先ほども述べたように、ターナー症候群だと分かったら、治療を施してあげて、あとはそれまで通り見守るのが大切です。
ただ、どうしても悩んでしまう時もあると思います。そんな時は、遠慮せずにかかりつけの医師や、「ターナー女性と家族の会」に相談してみてください。
親御さんが元気で楽しく生きていることが、子供の幸せにつながるはずです。