
妊娠初期の流産の症状と原因!ママのせいではない!気をつけることは?
妊娠の喜びと共に、「流産するかもしれない….」、そんな思いが口には出せない不安として妊娠初期の妊婦さんの心に影を落とします。
気が重くなるような話ですが、「流産」は誰でも妊娠したら心配になります。悲しいことですが、妊娠の約15%は流産になると言われています。そして、「流産」の大半は妊娠初期に集中しています。
ここでは、妊娠初期の流産の原因と症状、そして妊娠初期の流産はママの注意で防げるのか?気をつけることは何か?をお伝えします。それでは見ていきましょう。
流産とは
流産とは、何らかの理由で妊娠22週未満の赤ちゃんが亡くなることです。22週以降の赤ちゃんの死亡は死産と呼びます。
発症時期による流産の分類
流産の中でも12週までを早期流産。そして12週以降を後期流産と言います。
流産の頻度は?
妊娠が流産となる確率は15〜20%です。また、妊娠しているとわかる前に流産して気づかないケースもあります。そして、流産の85%は早期流産で、妊娠12週までに起こります。
妊娠経験者6人に1人が流産を経験していると言われています。多くの女性が経験している流産ですが、流産は女性の中でもハイリスク妊娠の妊婦が起こしやすい疾患と言われています。
ハイリスク妊娠とは?
- 若年・高齢出産
- 低身長、肥満など身体的特徴
- 社会的特徴(婚姻状況、特殊な職業など)
- 過去の妊娠時の問題(流産、死産、妊娠中の病気の有無)
- 妊娠前から存在する病気
- 妊娠中に発症した病気
- 妊娠中に有害物質、薬物への曝露
流産の原因は?
早期流産(妊娠12週まで)
妊娠12週頃までに起こる流産のほとんどは赤ちゃん側の原因、遺伝性疾患、先天性異常によるものです。ですから受精の瞬間に流産かそうでないかが決まると言えます。
また、受精卵は1日ごとに細胞分裂をくり返していきます。正常に育っていく受精卵もあれば、途中で分裂しなくなる受精卵、正常な形で分裂していかない受精卵と、1つ1つが全てが異なっています。例え体外受精で胚盤胞まで正常だったことを確認できたとしても、その後のことは確認することはできません。
例えば、お母さん自身が努力して妊娠前に卵の質を上げることができるなら、妊娠初期の流産対策にはなるのかもしれません。しかし、すでにおなかの中にいる赤ちゃんの運命を変えることはできないのです。
早期流産の原因は、妊娠に気づかずに飲酒、喫煙、薬の内服、仕事や運動したことなどではないとされています。(薬については禁忌とされるものがあります。後述します。)
また、よく心配されるような精神的ショックや軽いケガ(滑る、転倒など)などは早期流産とは無関係と言われています。
早期流産の原因は、防ぎようもない運命を持った受精卵だったと言うことで、ママの努力(母体側)ではどうすることもできません。
早期流産の確率と心音確認
妊娠が確認されると、心音確認が最初の関門となります。妊娠初期の流産(早期流産)の多くは、心音確認の前に起こっています。心音が確認できれば、ひとまず順調に成長している証拠です。流産のリスクも激減します。お母さんが妊娠5~6週で、だいたいは心音を確認できています。また1度心音が確認された後、8週目頃の検査で正常な心拍が確認できれば、高い確率で妊娠は継続できます。
しかし、この週数には多少の誤差がもちろんあります。それは排卵、着床のタイミングが正確にはわからないからです。そのため、多少の誤差はあるものとして、週数がカウントされています。
妊娠中は薬を飲んでもいいのか?
妊娠週数により、薬が赤ちゃんに影響を与える危険性も変わってきます。中でも、妊娠初期(妊娠4週~15週)は特に注意が必要な時期です。
風邪薬や頭痛薬・・・市販の薬は?
ドラッグストアでも手軽に手に入る市販薬は、ちょっとした風邪のとき、頭が痛いとき、頼りになります。置き薬として常備している家庭も多いでしょう。
服用の際には必ず添付文書を読み、妊娠中の措置方法について正しく確認しましょう。妊婦が該当の薬を服用するにあたって、「投与しないこと(不可)」から「長期投与を避けること」まで、段階的に表現されています。判断に迷う時は、医師や薬剤師の指示に従ってください。
病院で処方される薬は?
病院を受診し薬を処方してもらう時は、妊娠中であること、もしくは妊娠の可能性があることを必ず伝えましょう。問診票などにあらかじめ記入する場合でも、診察中に医師に薬の飲み方について聞いておくと安心です。
妊娠が分かる前に処方された薬は、赤ちゃんにどの程度影響があるのかわかりません。新しく処方してもらうか、妊娠中でも飲んで大丈夫か医師や薬剤師に確認しましょう。
妊婦に禁忌(きんき)される薬
- ワルファリン(抗凝血薬)
- エトレチナート(角化症治療薬)
- リバビリン(抗ウイルス薬)
- トリアゾラム(向精神薬)
- エルゴタミン(片頭痛治療薬)
- ホルモン剤
- 抗生物質(アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系)
後期流産(妊娠12週以降)
現在の医療では、12週以降の流産の多くは原因がハッキリとわかっていません。
ですが、下記の項目はお母さん側の問題と言えるでしょう。
- 子宮構造的な異常(子宮筋腫、重複子宮、子宮頸管無力症)
- 飲酒、喫煙、治療薬、コカインなどの薬物
- 重度のケガ
- 感染症(サイトメガロウイルス、風疹など)
- 重度の甲状腺機能異常
- 重度の糖尿病
- 無治療の慢性腎臓病、全身性エリテマトーデス、高血圧など
- RH式血液型不適合(母体Rh-、胎児Rh+の場合)
流産経験者は2度目以降の妊娠も流産の確率が上がります。また流産の回数が多いほど再び流産するリスクが高くなります。流産を繰り返す場合は、不育症であることも十分考えられます。ですので、早期に検査、治療を始める必要があります。
(※ 不育症とは、妊娠はするが赤ちゃんが育たずに流産、死産、早産を繰り返すこと)
流産の種類
流産の種類と名称を下記に用語説明します。
自然流産 | 人為的でなく起こる流産すべてのこと。 |
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人工流産 | 「人工妊娠中絶」のこと。母体保護の目的で母体保護法指定医によって行われる手術 |
切迫流産 | 妊娠20週までに子宮頸管は開大していない状態で出血や痙攣性の痛みがあり、赤ちゃんが失われる恐れがある状態のこと。 |
進行流産 | 妊娠20週までに出血と痙攣性の痛みがあり子宮頸管(子宮口)が開大し自然に出血や腹痛とともに子宮内容の排出が始まった状態のこと。 |
完全流産 | 赤ちゃんと胎盤が子宮の外へすべて出てしまった状態のこと。 |
不完全流産 | 赤ちゃん、胎盤の一部しか子宮の外に出ていない状態のこと。子宮の中に血液の塊が少し残っている状態。 |
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稽留(けいりゅう)流産 | 赤ちゃんは亡くなっているけれどもまだ出血や腹痛などの症状が何もない状態のこと。医療機関の診察で初めて確認します。 |
感染流産 | 子宮内の細菌感染を伴った流産のこと。 |
反復/習慣流産 | 流産の繰り返しが2回起こること。/流産を3回以上繰り返した場合のこと。 |
化学流産 | 妊娠のかなり早い段階で流産した状態。尿検査や採血検査で妊娠反応は出たものの、超音波検査では妊娠を確認できないことを言います。市販の妊娠検査薬が一般的に広く使われるようになったため気づくようになった病態で検査をしなければ通常の月経と考えてしまうこと多いといわれています。 |
流産の症状とは?
流産の前、鮮紅色(せんこうしょく:鮮やかな赤色)または暗赤色(あんせきしょく:どす黒い赤色)の少量、もしくははっきりとわかる出血が起こり、子宮が収縮して腹部にけいれんした様な痛みが起こります。
妊娠週数が進むに連れ腹痛が強くなり出血量が多くなります。出血量の目安は、通常の生理2日目程度の量に比べて、それより多ければ「多量の出血」、少なければ「少量の出血」と言います。
また、下腹部痛も同じように通常の生理2日目と比べて、それより痛いと「強い痛み」、それほど痛くなければ「軽い痛み」とします。
- 少量の出血、軽い下腹部痛がある
→診療時間内に産婦人科を受診します。胎嚢(たいのう)が子宮内にあり、子宮口が開いていなければ「切迫流産」と診断されます。流産するかどうかは、赤ちゃんの力次第です。経過を見守りましょう。 - 比較的多めの出血があり、お腹がギュッと絞られるような陣痛に似た下腹部痛がある
→診療時間内に産婦人科を受診します。内診や超音波検査で、「進行流産」と診断されるなど、妊娠継続が不可能と判断されれば、子宮内を掻把(そうは)する手術を行うか、自然流産を待ちます。子宮内に残っている胎嚢(たいのう)や胎児部分が多ければ、手術が選択されます。 - 出血も下腹部痛もないが、超音波検査で赤ちゃんが成長していなかったり、枯死卵が見つかる
→「稽留(けいりゅう)流産」と診断されるでしょう。妊娠継続が不可能なため、子宮内を掻把(そうは)する手術を行うか、自然流産を待ちます。 - 超音波検査で胎嚢(たいのう)が認められず、強い下腹部痛がある
→子宮外妊娠の疑いがあります。すぐに救急外来へかかってください。出血はある場合も、ない場合もあります。
赤ちゃんが子宮内で死亡していても腹痛や出血が起こらない場合があります。その時は、自然排出を待ちます。ですが、子宮内の組織から感染を起こす場合もあるため、その時は手術で取り除く場合もあります。
正常の妊娠でも妊娠初期の出血や腹痛は起こることがあります。よって症状だけでは流産なのか、正常なのか自分では判断しにくいと言えるでしょう。少量の出血や軽い腹痛があった時には次回の検診時に医師相談するとよいでしょう。
ただし出血量が多い場合や腹痛が強い場合は異所性妊娠(子宮の外で妊娠している状態)の恐れがありますので夜間、時間外でも医療機関を受診する必要があります。
流産の予防法は?
妊娠12週までの流産の原因のほとんどは赤ちゃん側の原遺伝性疾患、先天性異常が原因によるものです。ですので、受精の瞬間に流産かそうでないかが決まると言え、早期流産の予防は非常に難しいと言えます。
早期流産の原因は、防ぎようもない運命を持った受精卵だったと言うことで、ママの努力(母体側)ではどうすることもできません。しかし妊娠を希望する前にできることはあります。禁煙や禁酒を心がけ、風疹や麻疹などの予防接種を済ませることも重要です。基礎疾患がある場合は必ず受診し治療しておくようにしましょう。
お母さんは身体的、精神的に健康な身体を作って赤ちゃんを迎えられるようにしておく必要があります。禁酒はストレスのない程度に行うのが良いでしょう。
流産の診断、治療は?
流産の診断は内診、超音波検査、血液検査により行われます。
妊娠20週以前に子宮頸管が開大している場合は流産は避けられません。現在の医療では妊娠12週までの切迫流産には予防薬はないとされています。
切迫流産では通説的に運動を控え、できるだけ安静にし、性交を控えることが大切との報告がありますが、はっきりした科学的根拠はありません。行動制限については担当医師の指示に従い、定期的な診察を受ける必要があります。
完全流産、化学流産に対しては治療の必要はありません。稽留流産や不完全流産の場合、発熱など身体状態が悪くない場合は自然に出血するのを待ちます。自然に出血しない場合は外科的処置や陣痛誘発剤を使用します。
感染流産の場合、胎児と胎盤をできるだけ早く除去し、抗菌剤の注射をしていく必要があります。
反復流産、習慣流産の場合、何らかの原因で赤ちゃんが子宮内で育たない可能性があります。担当医と相談して不育症の専門家へ受診し治療していく必要があります。
流産後に気を付けることは?
流産を経験した女性はホルモンバランスの変化と赤ちゃんを失った喪失感から悲しみ、怒り、罪悪感、次の妊娠に対する不安など、感情のバランスを失いやすくなります。赤ちゃんを失った喪失感は自然な反応です。
流産した感情を抑えたり否定したりはしないで、誰かに自分の気持ちを話したり、涙を流して悲しんだりすることで感情を整理していくことが必要です。
お母さんは赤ちゃんが流産したのは自分のせいだと罪悪感を感じる方も多いと思います。しかし、妊娠12週未満のほとんどの流産は母体が原因ではないことを知っておくことが必要です。次の妊娠に不安がある時は主治医に相談し必要な場合は検査を受けても良いでしょう。
流産をすると次回の妊娠も流産するリスクは高まります。しかし、ほとんどの女性は次の妊娠では妊娠を継続することが出来ていることを知っておきましょう。
流産を経験した女性へ
流産を経験した女性にとって、流産は人生で最も辛いことの一つと言っても過言ではありません。流産は染色体異常で防ぐことができないとわかっていても、ご自分のことを責めてしまう方も多いかと思います。罪悪感の矛先が自分以外に向くことがあるかもしれません。
でも、仮にご自身にそのような日が来ても、どうぞご自分も周囲も責めることなく、ご自身のお子さんと短い時間でも一緒にいられたことを誇りに思ってください。そして、再度妊娠したなら、起こるかわからない未来を不安に思って今を過ごすより、新しい命が宿ったことに感謝して、マタニティライフを楽しんでください。
お母さんが明るく幸せな気持ちでいることが、おなかの赤ちゃんにとっては一番です! 今、この瞬間を大事に、幸せな気持ちで過ごしていきましょう。
正しい知識を持ち妊娠による様々な不安を解消し、より良いマタニティライフを過ごせるようにしましょう。