出生前診断とは

出生前診断とは妊娠中の胎児の状態を調べる検査を行い、検査結果をもとに医師が赤ちゃんの先天的異常を診断すること。

<出生前診断の種類>
•NIPT検査
•羊水検査
•超音波検査
•胎児の心拍数のモニタリング など

<出生前診断でできること>
•先天的な病気や異常の有無
•胎児の性別

この記事では出生前診断の目的や方法、診断できる疾患について解説

出生前診断の目的

出生前診断について

出生前診断の目的は主に4つ。

•生まれる前の赤ちゃんの状態を確認
•胎児への治療や投薬
•最適な分娩方法の判別
•性別など赤ちゃんに関する情報を夫婦に提供

赤ちゃんの状態を把握し、異常がわかると早期に治療を開始できます。

また最適な分娩方法を検討したり、出生後の療育環境や療養環境の準備も可能

性別など赤ちゃんに関する情報を夫婦に共有するのも1つの目的です。

出生前診断でわかる先天性疾患

出生前診断について説明する看護師

出生前診断でわかる先天性疾患は形態異常と染色体異常の2種類。

形態異常

臓器や個体が異常な形をしている状態を指す医学用語。

具体的な疾患は

  • 奇形
  • 変形
  • 変成
  • 欠損 など

染色体異常

染色体とは

染色体は親から子へ受け継がれる遺伝情報が詰まったDNAが太く折り畳まれているもので、いわば細胞の設計図のようなもの。
人の体のどの部分にも同じ染色体が使われています。

染色体の種類

染色体の画像

引用元:平石クリニック

染色体は常染色体と性染色体の2種類。

人の場合は44本(22対)の常染色体と2本(1対)の性染色体の合計46本で構成されています。
常染色体は長いものから順番が割り振られていますが、実は22番より21番の方が短いです。

21番の染色体に異常があるとダウン症が発症します。

性染色体は性別に関わる染色体で、X染色体とY染色体があり、XXだと女性、XYだと男性に。

母親から受け継ぐのはX染色体なので、父親からXかYどちらを受け取るかで性別が決まります。

染色体の変化

赤ちゃんの染色体は両親から1本ずつ引き継がれて構成されますが、その際に変化が起きたりすると染色体に異常が発生します。

例えば1本もらうはずが2本もらってしまうなど。

この染色体の異常を「染色体の数の変化」と「染色体の構造の変化」と呼びます。

染色体の数の変化

染色体の数の異常

染色体の構造の変化(構造異常)

染色体の構造の異常

出生前診断でわかる多くの異常は染色体の数の変化です。

•常染色体異常
•性染色体異常

染色体の数的異常には常染色体異常と性染色体異常の2種類があります。

常染色体異常

常染色体異常

性染色体異常

性染色体異常

出生前診断の種類

出生前診断の種類

出生前診断には形態異常を調べる検査と染色体異常を調べる検査があり、染色体異常を調べる検査では診断を確定できる確定検査と確定できない非確定検査の2つに分かれます。

非確定検査
検査の名称超音波検査母体血清マーカー検査新型出生前診断(NIPT)
検査の時期11週〜30週15週〜18週10週〜22週
検査の方法母体の腹部に機械をあてる。または膣内に挿入する。採血採血
安全性安全
対象となる先天性疾患・各臓器の形態、動き、数、大きさの異常

・13,18,21トリソミー

・18, 21トリソミー

・二分脊椎

・13, 18, 21トリソミー

・全染色体の異常

検査費用の目安1〜5万円2〜3万円20万円前後
確定検査
検査の名称絨毛検査羊水検査
検査の時期11週〜14週15週以降
検査の方法腹部に針を刺すか、子宮頸部にカテーテルを挿入して絨毛を採取する腹部に針を刺し、羊水を採取する。
安全性母体への負担があり、わずかだが破水、感染、流産の可能性がある
対象となる先天性疾患全ての染色体の変化
検査費用の目安10〜20万円10〜20万円

非確定検査の種類

超音波検査

11週〜30週
1〜5万円
非確定検査

非確定検査の種類

超音波検査は超音波をおなかに当てて反響で画像化する検査。

体や赤ちゃんに負担をかけずに検査でき、レントゲンなどと違い被曝の心配もなし。

目視の診断なので医師の技量によるところも大きいですが、リスクが少なく形態異常や13・18・21トリソミーの検査ができます。

母体血清マーカー検査

15週〜18週
2〜3万円
非確定検査

母体血清マーカー検査(クアトロテスト)は、お母さんの血液を採取し4種類の成分(AFP・非抱合型E3・hCG・インヒビンA)を測定して、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(エドワーズ症候群)・開放性神経管欠損症(二分脊椎症・無脳症)の有無を調べます。

それぞれの疾患で陽性確率が決まっており、基準より高いと陽性、低いと陰性です。

ちなみに疾患の確率は21トリソミー(ダウン症候群)で1/295、18トリソミー(エドワーズ症候群)で1/100、開放性神経管欠損症(二分脊椎症、無脳症は1/145です。

陰性的中立は75%〜85%であり、確率で算出されるので陽性と診断されても確実に疾患があるわけではありません。

母体血清マーカー検査は非確定検査のため、診断結果を確定させるためには確定検査が必要。

新型出生前診断(NIPT)

10週〜22週
20万円前後
非確定検査

新型出生前診断とは母体血を用いた出生前遺伝学的検査で、Non-Invasive Prenatal genetic Testing:NIPT)のこと。

お母さんの血液を採取して胎児由来のDNAの断片を母体由来のDNAと比較することで染色体異常を診断する検査です。

メリットは妊娠10週目から検査できることと、陰性的中率が99.99%と非常に高いこと

ただNIPTは非確定検査なので陽性の場合は確定検査を受ける必要アリ。

確定検査の種類

確定検査の種類

超音波検査、母体血清マーカー検査、新型出生前診断(NIPT)は非確定的検査
非確定的検査とは先天性疾患のある確率を求める検査で、診断を確定することは不可能。

これに対して絨毛検査、羊水検査は確定的検査

確定的検査とは先天性疾患があるかないかを確定する検査で、診断を確定可能。

非確定的検査で陽性だった場合、確定的検査で診断を確定します。

絨毛検査

絨毛検査

引用元:身原病院

11週〜14週
10〜20万円
確定的検査

絨毛検査は、超音波のガイドの元でお腹に針を刺すか膣内からカテーテルを挿入、早期胎盤の絨毛細胞を採取し、採取した細胞を培養して顕微鏡で染色体を検査する方法。

母体への負担のある検査で、わずかですが破水・感染症・流産の可能性あり。流産の可能性は1%程度です。

絨毛検査では、染色体疾患全般を診断可能。21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミー以外の染色体の異常がわかります。
同じ確定的検査である羊水検査と比べると、早い週数で検査でき、羊水よりも採取できる細胞の数が多いため、より正確な遺伝子検査が可能

羊水検査

羊水検査

引用元:身原病院

15週〜
10〜20万円
確定的検査

羊水検査は羊水の中に浮かんでいる胎児の細胞を採取し検査する「確定的検査」。
胎児の細胞を直接調べるので、結果は確定的。

超音波のガイドの元でお腹の羊膜内に針を刺して羊水を採取するため、破水や流産のリスクが0.3%程度あり。

羊水検査では、21トリソミー・18トリソミー・13トリソミー以外にも染色体疾患全般を診断可能。

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