切迫早産とはどんな状態?安静と言われたら!切迫早産はママのせいではない


妊娠中はさまざまなトラブルを心配されるかと思います。順調に過ごしてきたお母さんでも、切迫早産や早産と無縁とは言えません。
妊娠初期の流産と比べると早産は頻度が少ないと言われていますが、それでも出産の日を無事に迎えるまでは、気が気ではないでしょう。

ここでは流産と早産、そして切迫早産の違いや、その原因や症状、安静と言われたら入院は必要なのか?自宅で安静にする場合の注意点は?といった情報をまとめますので、参考にしてください。

流産と早産の違い

お母さんが妊娠をした時に、妊娠37週0日〜41週6日の間に出産することを正期産と言います。

日本では、妊娠22週0日〜36週6日の間に出産することを早産と言い、妊娠21週6日までの出産を流産と言います。21週6日は、赤ちゃんがお母さんのお腹の外では生きていけない週数です。

37週未満で生まれた赤ちゃんのことを早産児と呼びます。さらに、出産時の赤ちゃんの体重による分類では「2500g未満を低出生体重児」、「1500g未満を極低出生体重児」、「1000g未満を超低出生体重児」と分類されています。

早産と切迫早産

切迫早産とは?

切迫早産とは、「早産になりかけている」状態のことです。具体的には、お腹の張りや痛み、そして出血があったり、子宮口が開きかけていて場合によっては破水しているなど、通常より早い週数で赤ちゃんが出てきてしましそうな状態のことです。

「切迫」とは、差し迫った、緊張した状態になることを言います。切迫早産は、早期治療でおさまる軽度から、早産が避けられない重度まで色々な場合があります。

早産とは?

先にも説明しましたが、妊娠37週0日~41週6日までの出産のことを「正期産」といいます。いわゆる「出産予定日」頃の出産で妊娠10ヶ月頃です。

そして、「早産」とは「正期産」よりも前に出産することで、妊娠22週0日~36週6日までの出産のことです。妊娠6ヶ月~9か月頃です
妊娠6ヶ月~9か月頃は、赤ちゃんがお母さんのお腹の外に出ても生きていけるぎりぎりのところです。

日本で早産となる人は、全妊婦さんのうち5%程度です。これは世界的にみても少なく、日本の周産期医療が進んでいる証と言えるでしょう。
また、早産は人為的に行なう人工早産と自然早産に分けられます。

人口早産とは?

早産のなかで、お母さんや赤ちゃんになんらかの問題が生じて妊娠継続が困難となり、命を守るために人為的に出産させる方法を「人工早産」といいます。

自然早産とは?

「自然早産」とは、なんらかの理由により通常より早いタイミング(妊娠37週未満)で自然に陣痛がきてしまい出産する場合を言います。早産のうち、約75%は自然早産です。

妊娠22週未満での出産を流産と言います。

早産児・未熟児・低出生体重児の違いについて

妊娠37週未満で生まれた赤ちゃんを「早産児」ともいいます。予定より早く生まれた赤ちゃんを「未熟児」や「低出生体重児」と呼ぶ方が聞き覚えがあるのではないかと思います。

未熟児とは文字が表す意味そのもので、「小さく生まれ身体の成長が未熟です」ということで少し前までは未熟児の呼び方が一般的でした。ですが、小さく生まれたからといって身体の機能に問題があるとは限らず、その言葉の曖昧さから現在では使われなくなってきています。

赤ちゃんの生まれた時の体重を基準とする分類は、以下の通りです。

【出生時の体重による分類】
低出生体重児 :2,500g未満
極低出生体重児:1,500g未満
超低出生体重児:1,000g未満

赤ちゃんが、低出生体重児として生まれる割合は、お母さんの年齢が若年(20歳未満)の場合と高齢(40歳以上)の場合に高くなる傾向があります。

母親の年齢階級別2,500g未満児の割合
参照:低出生体重児保健指導マニュアル/厚生労働省(外部サイトへ移動します)

切迫早産の原因は?

赤ちゃん側とお母さん側のそれぞれの理由が相互に関係し、早産・切迫早産の原因となります。過去に早産の経験があるお母さんはその後の妊娠でも早産になりやすいと言われています。お母さん、または胎児、もしくはその両者の状態が悪化した場合は人工的に早産をさせる場合があります。

人口的に早産をさせる原因としては妊娠高血圧症候群、前置胎盤、常位胎盤早期剥離などの理由で赤ちゃんがお母さんのお腹の中で生きていけない状態になった時などです。

感染症(子宮内感染、性感染症)

子宮内感染が早産の最も多い原因です。8割程度を占めています
子宮内感染の原因は、膣から子宮へ細菌が入ることで起こります。
細菌の感染により子宮内膜に炎症が起こる症状を子宮内膜炎と言います。子宮内膜炎になると内膜が弱くなり破水や子宮の収縮(陣痛)を誘発する可能性があります。

クラミジア感染症などの性感染症も、切迫早産や前期破水の原因となります。

多胎妊娠

双子や三つ子などの多胎妊娠では、子宮がより大きくなるので、早い段階からお腹が張りやすく、早産の可能性が高くなります。
近年、不妊治療など生殖医療の進歩に伴い多胎妊娠が増え、早産の割合も増えています。

多胎妊娠の分娩は赤ちゃんの障がいや生命の危険の確率が少し高くなると言われ、一部の施設では帝王切開による出産を行うところもあります。

高齢出産(35歳以上の出産)

近年、女性の社会進出が増えてきた事で晩婚化の影響などから高齢出産(35歳以上での出産)が増えています。

高齢女性の妊娠では卵子の老化から、受精卵が染色体異常となり赤ちゃんの21トリソミー(ダウン症候群)の発生確率が高くなります。もし赤ちゃんに染色体異常があれば、流産・早産・死産などの可能性が高くなります。
心配な場合は、NIPT(新型出生前診断)を行い、母体の血液を採取してお腹の赤ちゃんの遺伝子を検査する方法などもあります。

子宮頸管無力症

子宮頸管とは赤ちゃんが出てくる子宮口です。通常は陣痛が始まってから子宮口は開きますが、痛みが無く開いてしまう症状のことをいいます。
子宮口が開くと陣痛よりも前に赤ちゃんが出てきてしまいます。

子宮の病気や異常

子宮筋腫や子宮の形の異常などがあると、早産の可能性が増します。
また、前置胎盤(胎盤が子宮の出口をふさいでいる状態)や、常位胎盤早期剥離(胎盤が子宮の壁からはがれる)の場合は、人工早産を選択しなければならない可能性が高くなります。

また、円錐切除術という手術を受けたお母さんも早産になりやすい傾向がみられます。

ライフスタイルの乱れ

過度なダイエットや痩せすぎ、そして妊娠中の喫煙や飲酒などにより、赤ちゃんに十分な栄養が行き渡らず胎児発育不全になる可能性があります。胎児発育不全になると羊水過多になりやすく、陣痛が来る前に破水する「前期破水」を起こしやすくなります。

過度なダイエット、そして喫煙や飲酒は、妊娠中の赤ちゃんにとって大きなデメリットです。また、発育不全により赤ちゃんの元気がないと人工早産を選択する可能性も出てきます。ライフスタイルの乱れはお母さんが自覚する事で回避出来る事なので、後々後悔しないためにもこのような行為は妊娠前や妊娠中は避ける必要があります。

妊娠高血圧症候群

妊娠時に高血圧症を発症する事を「妊娠高血圧症候群」と言います。また、妊娠前からの高血圧や、妊娠20週目までに発症した高血圧は「高血圧合併妊娠」と言います。さらに、高血圧症を妊娠20週以降に発症すると「妊娠高血圧症」と言います。

「妊娠高血圧症候群」は妊娠している方の約1/20の割合で発症します。妊娠34週未満での発症を早期型と言い重症化しやすい恐れがあるため注意する必要があります。重症化するとお母さんは、けいれん発作、脳出血、障害の危険性があり、最悪の場合は死に至る可能性が多くあります。

妊娠高血圧症候群はお母さんと赤ちゃんの両方が大変危険な状態になる危険性があるので、特に注意が必要です。

切迫早産・早産の兆候は?

性染色体異常の診断は難しい

切迫早産のわかりやすい自覚症状は下記の通りです。
症状は軽いものから深刻なものまでさまざまです。

出血

最も気づきやすい症状です。
37週以降なら、いわゆる「おしるし」の可能性が高いと言えるでしょう。ですが、それ以前であれば、早産の兆候かもしれません。
ピンク色のおりもの程度から、血の塊のようなもの、真っ赤な血が大量に出る場合など量も程度もさまざまです。

下腹部の張り感や痛み

妊娠後期になるにつれてほぼ全員の妊婦さんが感じるのが、お腹の張りです。このお腹の張りは普通はしばらく安静にしていれば治まります。
しかし横になって休んでいても張りが続く、規則的にお腹が張る、張りが痛みに変わる場合などは早めに受診されることをお勧めします。

おりものの変化

本来、おりものは乳白色や透明な色をしています。
しかし、おりものの色が黄色や緑がかった色になる場合は細菌感染などが疑われます。
黄色や緑っぽい場合は淋菌感染、チーズのようにポロポロとしている場合はカンジダ菌感染の可能性が高いです。
進行すれば子宮内感染を引き起こし、早産につながることがあります。

破水

陣痛が始まる前に羊水が流れ出てしまうのを「前期破水」と言います。前期破水の場合、量が少なく尿漏れと区別できないことが多々あります。
いつもと違うと違和感を感じたら、迷わず医師に相談することをお勧めします。

切迫早産の段階であればまだまだ対処の方法があります。
早期発見・早期治療が大切ですのです。「おかしいな?」と思ったらすぐに受診してください。

切迫早産・早産の予防法

切迫早産や早産にならないためにできることはあるのでしょうか?
切迫早産・早産のリスクが上がる要因としては、次のことが考えられます。

喫煙習慣がある

母子ともに良いことはありません。妊娠が分かった時点で禁煙しましょう。

副流煙も良いものではありません。パートナーや家の人にも協力してもらい、タバコの煙のない環境を作りましょう。

飲酒の習慣がある

アルコールの大量摂取は、母子ともに健康を害します。

少なくとも妊娠期間中は節酒を心がけましょう。

ストレスや心身の過労

長時間の労働や、心身に負担がかかることはできる限り避けましょう。

妊娠高血圧症候群

規則正しい生活と十分な休養を取るようにして下さい。また太り過ぎないことを心掛けましょう。

細菌感染

妊娠中にコンドームを使用しないで、セックスをすると細菌感染の可能性があります。
必ず妊娠中のセックスは必ずコンドームを使用しましょう。

痩せすぎ

太りたくない気持ちは理解できますが、お母さんが痩せすぎているとお腹の赤ちゃんに十分な栄養が行き渡りません。
バランスの良い食事を心掛けましょう。

そして、過度なダイエットは精神的にもお母さんの精神的にも肉体的にもストレスを与えます。過度なダイエットは禁物です。

 

生活環境や人間関係などによって実行が難しいこともあるでしょう。

しかし、リスクは一つでも減らしておきたいものです。

周囲の協力も得ながら、出来ることを探してみましょう。

切迫早産の注意点

NIPTの年齢制限を理解して受診しよう

赤ちゃんが出産予定日よりも早く生まれてしまうと大きなリスクを伴います。

妊娠30週未満で生まれた時には特に注意が必要です

赤ちゃんが出産予定より早く生まれてしまうと、赤ちゃんの臓器がまだ成熟していない為、頭蓋内出血や未熟児網膜症を起こす危険性があります。

成熟していない肺や腸への負担も大きくなります。出産後に退院しても酸素が必要なケースや、脳性麻痺を起こす危険性もあります。

次の場合は直ちに、かかりつけの産婦人科医師に相談を

正常な妊娠では経過中に出血することはほとんどありません。

  • 不正性器出血が有った時は子宮口が開きはじめている可能性があるので注意が必要となります。
  • 出血により子宮内に血腫が出来ると感染症を起こす危険性が高まります。
  • 膣内の細菌バランスが崩れるとおりものが多くなる事があります。

こうした場合は、治療を必要とする場合がありますので、速やかにかかりつけの産婦人科医師にご相談ください。

切迫早産の治療

三つ子以上だけ検査が実施できないことが多い

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる期間が短かければ短いほど、赤ちゃんの生存率や予後に悪影響を及ぼします。
切迫早産になった場合、出来る限りお腹の中で成長できる期間を延ばす努力をすることが大切です。

切迫早産の治療は第一に安静にすることで、状況に応じて投薬を行ないます。
軽症の場合は自宅安静で様子を見ますが、症状が重ければ入院が必要です。

【軽症の場合】

お腹に力を入れたり圧力がかかったりしないよう、安静に過ごします。
重いものを持つことや長時間の移動は避けましょう。
家事なども様子をみて休息しながら極力負担がかからないようにしましょう。
張り止めの薬を処方されることもあります。
また、感染症で炎症を起こしている場合は抗生剤も併用します。

【重症の場合】
症状が重い場合は入院が必要です。
安静を保ちつつ子宮収縮抑制薬などによる処置を行ないますが、早産が避けられないと判断した場合は、新生児集中治療室がある専門の設備が整った病院へ救急搬送されることもあります。</p></div>

次に安静度をⅠ〜Ⅳに項目分けします。

各産婦人科医師の指示に従い安静程度を守りましょう

妊娠数週による胎児の生存率

早産の場合、在胎週数が短いほど(早く生まれるほど)身体の発達が未熟であるため生存率に大きく影響します。

在胎週別でみると、在胎週数が長くなれば長くなるほど生存率は高くなり、22~23週では約66%の生存率なのに対して、28週以降は約98%となっています。生存率はおよそ1.5倍高くなっています。

また体重別生存率を見ると、特に1,500g以下で生まれた「極低出生体重児」と「超低出生体重児」の生存率を比較すると、こちらもより大きく生まれた方が生存率が高いことが分かります。

早産で生まれた子の健康上の問題

早産で生まれた赤ちゃんは未熟で、身体が十分に発達してません。ですから、しっかりとしたケアが必要になります。また生まれた週数により、発達の遅れや障がい、大人になった後も続く健康上の問題が考えられます。

生まれた直後は、体温管理などができ、集中治療が行なえる新生児集中治療室(NICU)がある施設でケアをします。

正期産に近い妊娠34週日~36週6日に生まれた後期早産児でも、呼吸障害や哺乳不良、黄疸などが起こり、発達の遅れも多くみられます。特に、妊娠34週未満で生まれた場合は、これらのリスクがより重症化しやすく、感染症にかかりやすかったり出血傾向があったりします。

早産で生まれると発達に影響があるのか

早産で生まれた赤ちゃん全てに、病気や発達障害のリスクがあるわけではありません。

出生時体重が2,000g以上ある場合、新生児集中治療室(NICU)に入る必要がなかったり、特別な医療的処置も不要の場合もあります。

一方、妊娠34週未満で生まれた場合んいは、NICUで治療して成長を手助けすることが多くあります。
特に呼吸機能の発達では、「34週が別れ目になる」ともいわれています。
未発達な肺機能で生まれた場合、自力での呼吸がうまくできず、生まれた直後から未熟児無呼吸発作などを起こしやすくなります。
そうした場合は、人工呼吸器でサポートする必要があります。

やはり、おなかの中にいる期間が短く身体が小さいほど、より重症化しやすい傾向にあると言えるでしょう。

その他、次のようなリスクが考えられます。

  • 脳性麻痺
  • 視覚障害(重症だと失明)
  • 難聴
  • 運動機能や言葉の遅れ
  • 慢性肺疾患や心疾患などの合併症が起こりやすい
  • 知的能力障害や自閉症、注意欠如・多動症(ADHD)が起こりやすい
  • 感染症にかかりやすく重症化しやすい

切迫早産はママのせいではない

切迫早産になったら、お腹の中で赤ちゃんができるだけ長く成長できるようにすることが大切ですが、しかしそれでも早産になることはあります。

早産で生まれた赤ちゃんすべてに問題が起こるとは限りません。
生まれた時は小さく成長がゆっくりだとしても、少しずつ同級生の成長に追いつくことも多くあります。
もし早産になった場合でも決してご自身を責めず、可愛い我が子の成長をゆっくり見守ってあげましょう。

妊娠中は切迫早産・早産の予防に努めることも重要ですが、ゆったりと気負い過ぎず無理のないよう出産までの日々を過ごすことが肝心です。

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