ダウン症とは?特徴や確率、いつわかるかなどを解説


妊娠中の方のなかには「ダウン症の原因や特徴がわからない」「出産前に検査できるのか知りたい」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

ダウン症は生まれつき染色体に異常があることで発症するもので、出産前の検査で可能性の有無を確認できます。

本記事ではダウン症の特徴や原因、出産前の検査方法などを解説します。赤ちゃんのダウン症が心配な方や検査を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ダウン症とは?わかりやすく解説

ダウン症とは、染色体の異常による先天性の疾患です。

染色体の異常は偶発的に起こり、600〜800人に1人の割合で生まれるといわれています。赤ちゃんがダウン症の場合、流産のリスクが高くなります。無事に生まれても、心疾患や呼吸器官などの合併症があらわれる傾向がある点も特徴です。

また、ダウン症の子どもは知能や運動機能などの発育がゆっくりな傾向があります。子どもの特性にあわせて丁寧に向き合い、適切に支援することが大切です。

参照:公益財団法人日本ダウン症協会「ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ

ダウン症の原因

ダウン症の原因は、21番目の染色体が通常より1本多く存在することです。ヒトの染色体は46本あり、1番目から22番目までは2本のペアになっていますが、ダウン症の場合は21番目の染色体が3本です。21番目の染色体が1本多いことから、ダウン症は21トリソミーとも呼ばれます。

染色体の異常は、精子や卵子ができる際や受精時に起こる分裂異常が原因だと判明しています。分裂異常は偶発的に起こるものであり、誰にでも起こり得る突然変異です。分裂異常が起こる原因はまだ解明されていないのが実態です。

参照:公益財団法人日本ダウン症協会「ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ
参照:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「ダウン症(ダウン症候群)

ダウン症の特徴

ダウン症の主な特徴は以下の通りです。

・発育がゆっくりしている
・動きがゆっくりしている
・不器用である
・顔が似る
・言葉を話すのが難しい
・聴力が弱い
・緊張しやすい

先述した通り、ダウン症の子どもは身体面・精神面ともに発育がゆっくりな傾向があります。

またダウン症の新生児には、以下のような顔つきや身体的な特徴が見られます。

・鼻の付け根が低い
・目の間隔が広い
・目がつり上がっている
・斜視である
・耳の位置が低い
・舌が大きい
・首の後ろに皮膚が余っている
・手のひらに横1本のシワがある

上記以外にも、ダウン症の場合頭が小さく小柄な傾向があります。また、顔の筋肉の緊張が低いため口が開いたままになっているケースも少なくありません。

参照:MSDマニュアル家庭版「ダウン症候群(21トリソミー)

ダウン症の種類

ダウン症には標準型・転座型・モザイク型の3種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

標準型21番目の染色体に異常があることで発症するタイプ。発症率は全体の95%。
転座型父母どちらかの21番目の染色体が他の染色体に結合した転座状態であることで発症するタイプ。発症率は全体の3%。
モザイク型正常な細胞と染色体異常がある細胞が入り交じることで発症するタイプ。発症率は全体の2%。

標準型はダウン症のなかで最も多く見られ、偶発的に起こる種類です。転座型は両親のどちらかの染色体に異常があり、遺伝することで発症します。

モザイク型はダウン症のなかで最も珍しいタイプです。標準型と同じく、両親の染色体に異常がなくても起こります。

ダウン症の確率は?年齢別に紹介

ダウン症の子どもは、女性が高齢になるほど発症率が高くなるといわれています。具体的には以下の通りです。

母体年齢別ダウン症の頻度
引用:公益社団法人日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)

高齢になるほど発症率が高くなる理由として、加齢により卵子の染色体異常が起きやすいことが関係していると考えられています。ただし、ダウン症発症のメカニズムはまだ解明されておらず、必ずしも高齢出産がダウン症につながるとは限りません。

参照:公益社団法人日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)
参照:公益社団法人日本産婦人科医会「2.染色体異常
妊娠中に赤ちゃんがダウン症か検査する方法

妊娠中に赤ちゃんがダウン症かどうか検査するには、以下の4つの方法があります。

・超音波検査(エコー検査)
・羊水検査
・絨毛検査
・NIPT(新型出生前診断)

それぞれの検査方法を解説します。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査(エコー検査)は赤ちゃんがどのくらい成長しているかを確認する検査です。赤ちゃんの状態を直接観察し、発育や形態の異常がないかチェックします。

エコー検査には、以下の3種類があります。

2Dエコー平面の静止画が撮影できる
3Dエコー立体的な静止画が撮影できる
4Dエコー立体的な静止画・動画が撮影できる

4Dエコーでは赤ちゃんの様子を立体的に観察できるだけではなく、動きも確認できます。より詳しく赤ちゃんの様子が見られるため、ダウン症が心配な場合は4Dエコーを受けるとよいでしょう。ただし、エコー検査では確定的な診断はできません。

なお、エコー検査は機械を膣内に挿入する経膣超音波検査と、お腹の表面に機械をあてる経腹超音波検査の2種類があります。妊娠初期は経膣超音波検査、中期以降は経腹超音波検査を行うのが一般的です。

参照:公益社団法人日本産婦人科医会「2. どちらからアプローチ?

羊水検査

羊水検査は、羊水に含まれている赤ちゃんの細胞をもとに染色体異常がないかを調べる検査です。赤ちゃんの染色体を直接採取・分析するため確定的検査と呼ばれ、妊娠16週目以降に受けられます。

羊水検査では超音波検査で赤ちゃんの位置を確認してから子宮内の羊水を注射で採取します。採取した羊水内の赤ちゃんの細胞を培養したうえで染色体の異常を調べるため、結果が出るまでに数週間かかるのが特徴です。

なお注意点として、羊水検査後に流産になる可能性が約0.1〜0.3%(1000人中1〜3人)程度あることが挙げられます。自然流産が起こる確率と比較してもそれほど高くはありませんが、リスクがないわけではないことに留意しておきましょう。

参照:公益社団法人日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)

絨毛検査

絨毛検査は胎盤の絨毛を採取して、赤ちゃんの染色体異常がないか調べる検査です。羊水検査と同じく確定的検査と呼ばれ、妊娠11〜15週目に受けられます。

絨毛検査では超音波検査で赤ちゃんの発育状態や異常の有無、胎盤の位置を確認してから絨毛細胞を採取します。検査方法はお腹から注射針を刺す経腹法と経膣法の2種類です。胎盤の位置によって検査方法が異なります。

羊水検査よりも早く検査結果が得られる一方、流産リスクが1%程度である点が特徴です。また、絨毛検査後に出血や破水が起こったり、ごくまれに重症合併症が起こったりする可能性があります。

参照:公益社団法人日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)

NIPT(新型出生前診断)

NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液中に含まれる赤ちゃんのDNAをもとに染色体異常がないか調べる検査です。

NIPT(新型出生前診断)は、約96%の確率でダウン症かを判断できる点が特徴です。

参照:厚生労働省「NIPT: noninvasive prenatal testing

妊娠10週目から検査が可能で、お腹の中の赤ちゃんがダウン症かを今回紹介する方法の中では最も早く調べられます。また、妊婦さんの血液は腕から採血するため、赤ちゃんや妊婦さんへの負担が少ない検査方法です。

妊婦さんの血液をもとに以下の染色体異常の可能性を調べます。

・21トリソミー(ダウン症)
・18トリソミー
・13トリソミー

これらの染色体異常の可能性を陽性・陰性・判定保留の3つに分けて判定します。陽性と診断された場合ダウン症の可能性が高いと考えられます。

参照:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「NIPT

赤ちゃんがダウン症かいつわかる?

赤ちゃんがダウン症かは、NIPT(新型出生前診断)を受ければ妊娠10週以降には判明します。NIPT(新型出生前診断)によるダウン症の陽性的中率は約96%で、陽性と診断された場合はダウン症の可能性が高いといえます。

参照:厚生労働省「NIPT: noninvasive prenatal testing

ただし、NIPT(新型出生前診断)は確定的検査ではありません。もしもNIPT(新型出生前診断)で陽性と診断された場合には、医師の判断のもと羊水検査や絨毛検査をする必要があります。そのため、確定診断は羊水検査や絨毛検査を受け、その検査結果が出てからと考えましょう。

エコー写真でわかるダウン症の身体的特徴

エコー検査をもとに、ダウン症の身体的な特徴があるかを確認可能です。エコーを用いた超音波スクリーニング検査では、染色体異常による疾患や体の異常がないかを検知できます。染色体異常による身体的な特徴には、主に以下が挙げられます。

・首のうしろがむくんでいる
・鼻の付け根が低い
・心臓に疾患がある

これらは先述したダウン症の身体的な特徴に共通して見られるものです。ただし、エコー写真だけではダウン症か確定できません。

エコー写真でこれらの特徴が見つかった場合、より正確に検査するには医師の判断のもとNIPT(新型出生前診断)や羊水検査、絨毛検査などの確定検査を受けてください。

ダウン症の親族がいても遺伝する可能性は低い

親族のダウン症が赤ちゃんに遺伝する可能性は低いとされています。先述した通り、ダウン症は偶発的な染色体の異常によって発症するケースが多いです。転座型のように遺伝が関係するケースもありますが、極めて低いとされています。

先天性の疾患のため、遺伝が大きく関係していると考える方もいるかもしれません。しかし、ダウン症は転座型を除いて遺伝の可能性は低く、偶発的に起こり得るものだと考えましょう。

参照:MSDマニュアル家庭版「ダウン症候群(21トリソミー)

妊娠中のつわりは胎児のダウン症と無関係

妊娠中のつわりの程度は、胎児のダウン症とは関係がありません。つわりは妊娠初期に起こる吐き気や食欲不振などのさまざまな体調の変化の総称です。

つわりは妊娠によるホルモンバランスの変化やストレスなどが原因だと考えられています。しかし、つわりのメカニズムはまだはっきりとは解明されていません。

また、つわりの程度は個人差が大きく、人によっては軽症の場合もあれば入院が必要になる場合もあります。そのため、症状の程度でダウン症の胎児を妊娠しているか判断することはできません。「胎児がダウン症だとつわりが重くなる」と聞いたことがあるかもしれませんが、科学的根拠はないため注意しましょう。

出産後にダウン症が疑われた場合の検査

出産後にダウン症が疑われた場合には、医師の判断のうえで血液検査をします。この血液検査は、ダウン症特有の身体的な特徴が見られた場合に診断を確定するために行うものです。

診断が確定したらダウン症の合併症を患っていないかを検査します。先述した通り、ダウン症は先天性の疾患や障害を併発するおそれがあります。血液検査や心臓の超音波検査を行って調べることで、早期の治療や対処を行いましょう。

ダウン症には根本的な治療法がないとされていますが、心臓や消化器などに生じる症状は手術で修復が可能な場合があります。

参照:MSDマニュアル家庭版「ダウン症候群(21トリソミー)

妊娠中に胎児がダウン症か調べたい場合は新型出生前診断がおすすめ

妊娠中に胎児がダウン症か調べたい場合には、NIPT(新型出生前診断)を受けるのがおすすめです。ダウン症は偶発的に起こりえるものであり、妊娠したすべての女性に診断検査の受診が推奨されています。

NIPT(新型出生前診断)は、早期に高精度でダウン症の可能性を調べられる検査です。確定的診断は受けられませんが、早期に可能性の有無を把握すれば適切な対処ができます。

平石クリニックではNIPT(新型出生前診断)を実施しています。赤ちゃんのダウン症が心配な方は、ぜひ当院へご相談ください。