NIPTとコンバインド検査の違いについて解説

コラム

出生前診断によって胎児が病気や障害などを持って生まれてしまうかどうかをあらかじめ知りたいという人は多くなりました。出生前診断には絨毛検査や羊水検査、血清マーカー試験などいろいろなものがありますが、よく注目されているものにNIPTと呼ばれる新型出生前診断とコンバインド検査があります。どちらも胎児がお腹の中にいる間にできる検査ではあるものの、何が違うのかがわからないという人も多いでしょう。この記事ではこの二種類の検査の特徴についてそれぞれ解説し、大きく違う部分をハイライトして説明していきます。

NIPTの検査の内容を理解しよう

新型出生前診断は妊娠してから現在では最も初期におこなうことができる非確定検査です。実施時期は妊娠10週以降で、希望すればかなり遅い時期になってからでも検査を受けられます。非確定検査という名前を見るともし検査を受けて胎児が病気を持っている恐れがあるとわかったとしても確定はできないものなのかと思うかもしれません。実際にその通りで、あくまで遺伝的に病気を持っている可能性があるかどうかを調べるもので、もしかすると陽性という結果だけれど本当は病気ではないという可能性もあります。ただ、非確定検査は身体に大きな負担をかけることなくおこなえる手軽さがあるのが魅力で、NIPTの場合には妊婦が採血を受けるだけで診断をしてもらうことができます。もし陽性という結果になってしまった場合にはあらためて絨毛検査または羊水検査を受けて確定診断を受けることになるというのが基本です。確定診断を受けることでその後の治療をどうしていくかを具体的に医師と相談することができるようになり、非確定検査の結果だけではできません。ただ、新型出生前診断は検査の正確さが高いことが知られていて、99%の確率で陽性なら陽性、陰性なら陰性という結果になります。次に新型出生前診断では何を検査しているのかを具体的に確認しておきましょう。NIPTの検査では胎児の染色体異常の有無を調べているのが特徴です。通常、染色体は23対存在していて、それぞれが二本のDNAの鎖からできています。しかし、受精卵ができる過程で染色体が二本ではなく三本になってしまうことが稀にあり、トリソミーという状態になることがあります。このトリソミーによって胎児が病気や障害を負ってしまうことが知られているため、NIPTではトリソミーになっているかどうかを調べています。実際には日本では三種類の染色体についてトリソミーかどうかを検査するのが基本です。海外では全染色体のトリソミーの有無を確認する検査もおこなわれていますが、日本では染色体異常と病気の対応関係について確度が高い三つが選ばれているのが現状です。具体的にはダウン症候群の原因になる21番目の染色体、エドワーズ症候群を引き起こす18番目の染色体、パトー症候群をもたらす13番目の染色体が検査対象になっています。この三つを検査するだけで染色体異常に由来する病気の全てをカバーできるわけではありませんが、全体の約7割がこの三つの病気なのでリスクが高いものは1通りカバーすることが可能です。実際の検査では採血された妊婦の血液に含まれているDNA断片を解析する仕組みになっていて、胎児の血液や組織を直接採取する必要はありません。妊婦自身のDNA断片と胎児のDNA断片を足し合わせた状態での検査になりますが、その量が標準に比べて多いとなるとトリソミーだと判断できるのです。DNAはほんのわずかにしか含まれていないので以前は検査が難しかったものの、定量的に増幅する技術が開発されたお陰でこのような正確性の高い検査がおこなえるようになっています。採血をしてもらってから結果が出るまでの期間は医療機関ごとに異なりますが、およそ1週間から2週間程度です。

コンバインド検査の内容を確認しよう

コンバインド検査はNIPTに続いて比較的妊娠の初期からおこなうことができる非確定検査です。実施できる時期はおよそ妊娠11週から13週になっていて、それ以降には実施しないのが原則になっています。コンバインド検査も染色体異常を調べるための検査で採血だけでなく超音波検査も組み合わせておこなうのが特徴です。この二つを組み合わせることによって正確に診断できるようにしたという歴史的経緯があり、胎児の染色体異常を調べる目的でよく用いられてきました。その統計データとして83%の確度で診断できる検査方法として知られるようになっています。17%は陽性だったのに実は染色体異常がなかった、あるいは陰性だったのに染色体異常があったということになるリスクがあります。特に治療をするうえでは本当は異常がないのに治療を進めてしまったという問題を起こさないようにすることが必要です。そのため、陽性になった場合には絨毛検査や羊水検査を受けて確定診断をしてもらうという流れを踏襲しなければなりません。この検査方法で検出できるのは染色体のトリソミーによって起こるとされているダウン症候群とエドワーズ症候群です。コンバインド検査でおこなわれる超音波検査ではNTと呼ばれる胎児の首の後ろにむくみがあるかを確認します。ダウン症候群やエドワーズ症候群では特徴的なむくみが生じるので、検出されたら可能性が高いと判断されることになるのです。ただ、それだけでは他の要因によってむくんでいるのではないかという疑問もあります。そこで採血によって血液中の成分についての分析をして総合的な判断をしているのです。実際には血液マーカーとして知られている胎盤由来のタンパク質などを検出して確認しています。また、1型糖尿病の有無や妊娠週数によっても値が変動することから、いろいろなパラメーターを加味した診断がおこなわれているのが実態です。超音波検査と採血を終えてから結果が出るまでは一般的には2週間程度になっています。

二つの違いからどちらを受けるかを決めよう

以上のようにNIPTとコンバインド検査はどちらも胎児の染色体異常に伴う病気や障害のリスクを診断するための非確定検査ですが、違いもたくさんあるのがわかります。あらためて違いがどこにあるのかを整理しておきましょう。まず、NIPTはダウン症候群、エドワーズ症候群に加えてパトー症候群も診断できるのが特徴で、コンバインド検査ではバトー症候群かどうかはわかりません。実施できる時期や確度についてもNIPTなら妊娠10週目から受けることができて、99%という高い確度を持っているのに対し、コンバインド検査の場合には妊娠11週目から13周目に限定されてしまい、確度も83%なので比較すると低めになっています。検査方法や検査している内容についても違いがあり、胎児由来のDNA断片を妊婦の血液から検出しているだけか、超音波検査と血液マーカーを代表とするパラメーターを総合的に見て判断しているかが異なっている点です。検査にかかる期間についてはどちらも長くて2週間程度でそれほど大きな違いはありませんが、新型出生前診断の場合には1週間で対応してくれる医療機関もあります。

非侵襲的で気軽に受けられる胎児の染色体異常の検査はいくつもありますが、妊娠初期から受けられて確度の高い非確定検査は限られています。コンバインド検査もよく用いられているものの、新たに登場したNIPTのほうがさらに早い段階から受けることができ、確度も99%という非常に高い値を示しています。検査期間も短く、検査できる病気の数も一つ多いことから新型出生前診断には出生前診断としてアドバンテージがあるでしょう。