35歳は高齢出産なの?障害やダウン症リスクと対策は?


最近では高齢からの妊活も当たり前の時代になりました。
人生の充実性という観点では喜ばしいことかもしれませんが、そもそも人体構造からすると、勿論妊活は早いに越したことはありません。
高齢出産になるほどリスクが高まるからです。

ここでは、高齢出産と結びつきの深い遺伝子疾患の一つである、ダウン症などリスクと対策について解説します。

ダウン症とは

遺伝子異常の代表例として、分かりやすい身体的特徴を持っているのがダウン症です。
染色体が1本多いことから、発生する外見的特徴や発達の遅延などが発生しやすい傾向にあるものの
近年では、医療や教育が進み、普通に生活が送れるような状態になっています。

正式名は「ダウン症候群」(最初の報告者であるイギリス人のジョン・ラングドン・ダウン医師の名前により命名)で、染色体の突然変異によって起こり、通常、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれます。この染色体の突然変異は誰にでも起こり得ますが、ダウン症のある子は胎内環境がよくないと流産しやすくなるので、生まれてきた赤ちゃんは淘汰という高いハードル乗り越える強い生命力をもった子なのです。ダウン症の特性として、筋肉の緊張度が低く、多くの場合、知的な発達に遅れがあります。発達の道筋は通常の場合とほぼ同じですが、全体的にゆっくり発達します。
引用:公益財団法人 日本ダウン症協会「ダウン症とは」

何歳から高齢出産?

高齢出産と呼ばれるのは、基本的に35歳を過ぎてからだとされています。ですが、近年では女性の社会進出の影響で高齢になってから出産をするケースが増加しています。

高齢出産の定義は、それ自体はっきりしていませんが、日本産科婦人科学会では「35歳以上の初産婦を高齢初産婦と呼ぶ」としています。
35歳以上の高齢出産は年々増え続けています。2016年に生まれた赤ちゃんのお母さんの約30%が高齢出産だったという調査結果も出ています。

【年齢別】妊娠・出産のリスクと対策

高齢出産は35歳以上とされています。高齢妊娠や出産のリスクは、年齢を重ねるにつれて高まっていきます。高齢でも赤ちゃんが欲しいと願う人がいる以上、リスクを下げるために対策を色々と講じる必要性があります。

29歳以下の妊娠・出産リスク

妊娠出産能力

29歳以下の成人女性は、妊娠出産能力が基本的に高いと言えます。

母体が若くても、生まれてくる赤ちゃんが障害を持つ可能性やダウン症になる可能性、あるいは流産になる可能性はあります。それでも29歳以下の母体の妊娠出産能力は高いと言えます。若い年齢の母体は卵子も若いため、健康的で他に何も異常がない母体であれば自然妊娠する確率が高くなります。

赤ちゃんが障害を持つ確率

29歳以下の出産で、生まれてくる赤ちゃんに障害がある確率は、約1/400以下です

決して低い数字とはいえません。しかし、高齢出産のときのリスクと比べればかなり低い確率だと言えます。

ダウン症の確率

29歳以下の出産で、生まれてくる赤ちゃんがダウン症になる確率は、約1/1000以下です。

さらに、25歳の出産の場合は1/1250、20歳の出産の場合は1/1667と低くなります。より若い年齢で出産するとダウン症の赤ちゃんが生まれる確率が低いことから、若くて健康的な母体ほど出産のリスクが低いということがわかります。

35歳の妊娠・出産のリスク

妊娠出産能力

30代も後半に差し掛かる、35歳からは徐々に女性ホルモンの分泌量が減っていきます。女性ホルモンの分泌量の低下から自然妊娠できる確率も低下していきます。女性ホルモンの分泌量が減ると排卵される卵子の量が減ってくるだけでなく、卵子の質も衰え始めるのでますます妊娠しにくくなります。

赤ちゃんが障害を持つ確率

35歳の出産で、生まれてくる赤ちゃんに障害がある確率は、1/192です。

35歳の高齢出産となって、生まれる赤ちゃんが障害を持つ確率は、29歳以下の若い時の1/400に比べて2倍以上の差があることが分かります。

ダウン症の確率

35歳の高齢出産で、生まれてくる赤ちゃんがダウン症になる確率は、1/385です。35歳の高齢出産となっただけで、29歳の若い時の1/1000以下に比べてダウン症になる確率が何倍も高まることが分かります。

39歳の妊娠・出産のリスク

妊娠出産能力

39歳にもなると35歳と比べて、いっそう妊娠の確率が下がります。

ドイツの研究機関が、1回の排卵を1周期として、何周期で妊娠にいたったかを調査しました。そのデータによると20代後半だと5周期、30代前半で6周期、30代後半になると13周期で妊娠にいたったようです。つまり、歳を重ねるだけ妊娠できる確率が低くなるため、そこから出産となるとさらに確率が低くなることが予想されます。

赤ちゃんが障害を持つ確率

39歳の出産で、生まれてくる赤ちゃんに障害がある確率は、1/83です。

上記の35歳からたった4年後に出産しただけで4倍以上も確率が上がってしまうため、年齢を重ねることが、どれだけリスクを上げてしまうかが分かります。

ダウン症の確率

39歳の高齢出産で、生まれてくる赤ちゃんがダウン症になる確率は、1/137です。

35歳の時と比べると4歳違うだけで1/385から1/137と約3倍も急増するため、年齢を重ねることが、いかにリスクを上げてしまうかがわかるでしょう。

41歳の妊娠・出産のリスク

妊娠出産能力

41歳の妊娠出産は、30代と比べると、より一層妊娠の確率が下がります。

排卵の確率はさらに減少し、排卵されたとしても卵子の質が低く妊娠できる可能性はさらに低くなります。

赤ちゃんが障害を持つ確率

41歳の出産で、生まれてくる赤ちゃんに障害がある確率は、1/53です。

39歳の時の1/83に比べると、たった2歳違うだけで障害を持つ確率がさらに高くなっていまいます。

ダウン症の確率

41歳の高齢出産で、生まれてくる赤ちゃんがダウン症になる確率は、1/82です。

上記の39歳からわずか2年後に高齢出産すると、ダウン症になる確率は1/137から1/82にまで急増するため、なので41歳の高齢出産では、ダウン症を持った赤ちゃんが生まれるリスクがさらに高いことを重々承知のうえで臨む必要があります。

42歳以上の妊娠・出産のリスク

妊娠出産能力

42歳以上で妊娠できる確率は5%未満だと言われています。妊娠を望まれる方にとっては狭き門となり、まず無事に通り抜けられるかが大事な勝負所となるでしょう。さらには妊娠できたとしても、赤ちゃんが障害を持つ可能性やダウン症になる確率が高くなります。

赤ちゃんが障害を持つ確率

42歳以上の出産で、生まれてくる赤ちゃんに障害がある確率は、1/33です。

42歳以上ともなれば、高い確率で障害を持つ可能性があります。49歳ともなると赤ちゃんが障害を持つ確率は1/8となります。高齢出産を決意したのであれば高い確率で障害を持つ可能性があることを念頭に置き出産準備する必要性があります。

ダウン症になる確率

42歳以上の高齢出産で、生まれてくる赤ちゃんがダウン症になる確率は、1/64以上です。

42歳以上から年齢を一つ重ねる毎に、1/50、1/38、1/30、1/23、1/18、1/14、1/11とダウン症になる確率は上がっていきます。42歳以上の出産では相応のリスクがあることを覚悟しておきましょう。

妊娠・出産の対策

どの年代も無事に妊娠できる確率を上げるためにも、周辺環境や食生活を見直す必要性があります。特にストレスは自律神経を乱れさせ、ホルモンバランスを崩してしまう要因になりますので、なるべくストレスフリーな環境を心がけ、出産しやすいように健康的な身体作りを心がける必要があります。

毎日の食生活や生活習慣、運動習慣を心がけ、主治医の指示に従ってできることは何でもやっていきましょう。

35歳、高齢妊娠・出産の実情

高齢妊娠や出産が起こる背景には、女性の社会進出による晩婚化があります。

多くの働く女性は結婚適齢期とキャリアアップの時期が重なるため、将来的にどうすればいいのか悩むケースが多く見かけられます。両立するのは想像以上に難しいことでしょう。また、出産を優先したくても仕事を休みたくないと思って妊娠に踏み切れないケースも多くあるはずです。

このような要因が重なることで、高齢妊娠や出産が増えていくのではないでしょうか。

高齢出産のメリットとは?

高齢出産は危険性が伴いますが、メリットも確かにあります。
まず何よりも、年齢を重ねていることで精神的・経済的なゆとりがあります。精神的・経済的な余裕から落ち着いて子どもを育てる環境が作れるのが最大のメリットです。

高齢出産はリスクがないとは言えません。ですが、メリットも確かにあるので高齢だからといって出産を諦める必要はありません。

ダウン症について知ろう

ダウン症(21トリソミー)とは

ダウン症候群とは、染色体の突然変異によって起こり、通常21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれます。この染色体異常が起こる原因のほとんどが母親由来であることがわかっています。その影響か、母親の年齢が上がるにつれてダウン症が起こるリスクが増えることも知られています。

ダウン症で起こる症状とは

ダウン症には見た目の容姿に共通点があります。それは、目が吊り上がっていたり、起伏の少ない顔だったり、小さめの耳であることなどが挙げられます。また、筋肉の緊張が低いため体が柔らかいという特徴があったり、心臓疾患や消化器系の疾患をはじめとするさまざまな合併症を起こしやすくなります。

  • 特徴的な見た目(目が吊り上がる・耳が小さいなど)
  • 知的障害
  • 小頭症
  • 低身長
  • 難聴
  • 乱視や遠視
  • 心奇形
  • 甲状腺機能低下症などの合併症

心疾患は無症状であることも多いです。ですが一方で先天的な心奇形が起こることも見逃せません。程度にこそ違いはありますが、呼吸がうまくできないことやミルク・母乳をうまく飲めないこと、体重が増えにくいなどの症状があります。

成長とともにさまざまな病気を引き起こす可能性は否定できません。ですが、ダウン症だからといってすべての方が合併症を発症するわけではありません。大半の方は成人します。平均寿命も伸びつつあり、70代・80代まで過ごす方も少なくありません。

ダウン症イコール命の危険があるというわけではありません。奇形や以上には手術で対応できるものも多いほか、教育についても早期に対応を行うことで能力を高められることが立証されています

ダウン症の可能性は誰にでもある

ダウン症は染色体異常です。おなかの中で赤ちゃんが大きくなるにつれて発症するものではありません。ですから、ダウン症にならないように事前に予防することはできません。

しかし、胎児がダウン症かどうかを知ることは可能です。NIPT(新型出生前診断)を受けることによって、出産前にダウン症(21トリソミー)をはじめ、複数の染色体異常を知ることができるのです。

NIPT(新型出生前診断)は羊水検査とは違い、採血のみで検査ができて非常に安全です。ですが、結果が確定的ではない「非確定的検査」です。陽性と判断されれば、本当に陽性(病気かどうか)をはっきりさせるために、次の検査を受ける必要があり、その結果が陰性と判断されれば99.9%の確率で陰性(その病気ではない)となります。

また、これから生まれてくる我が子がダウン症であるかどうかを事前に知ることによってさまざまなメリットがある一方、決して軽視できないデメリットも存在しています。

ダウン症とNIPTについて

おなかの中の赤ちゃんがダウン症になる可能性は、 生まれてきた赤ちゃん全体の約700分の1です。しかし、妊婦さんの年齢が上がるごとにダウン症のリスクは増えていき、特に35歳を超えるとその発生割合は300分の1を切ってしまいます。

NIPT(新型出生前診断)を受ける目的「心の準備」

ダウン症など赤ちゃんの染色体異常は、NIPT(新型出生前診断)によって把握できます。これは、命の選別を行うのが目的ではなく、赤ちゃんのことを知り、両親がゆっくりと受け入れていく準備を行うための検査です。

ただ、出産の高齢化によって子どもが大きくなったときのことを考え、サポートをしていくことが難しいと判断し、泣く泣く別れを決断することも少なくありません。

さらに、NIPT(新型出生前診断)によってダウン症かどうかを知ることができても、診断後は非常に短い時間で決断を下す必要があります。NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週から受けることができますが、結果が出るまでに1~2週間程度かかります。また確定検査である羊水検査については17週程度までに受検しなくてはいけません。羊水検査の結果が出るのもおよそ2週間程度時間がかかり、結果が出るのが19週くらいの流れとなります。

対して人工妊娠中絶を行う場合は妊娠22週未満です。そうなると中絶するかどうかの検討時期は決して長いものではありません。

NIPT(新型出生前診断)は母体への負担が非常に小さく、羊水検査に比べ簡単に受けられるというメリットのある検査である一方、このように短期間で判断を下さなければならない、妊婦さんへの心理的な負担が大きくなるというデメリットも知っておかなくてはなりません。

そのためにも、NIPT(新型出生前診断)を受けることを検討している方は専門クリニック・病院にて検査を受けること、そして適切なカウンセリングを受けられることを勧めます。

NIPT(新型出生前診断)により、正しい認識を持とう

母体年齢とともにダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は上がります。ただ、たとえ若く出産をしてもその可能性は決してゼロではありません。どのような年齢で出産をしても、ダウン症をはじめとする染色体異常が起こる可能性はあります。まず妊娠・出産・育児について両親がともに認識をすり合わせ、話し合い向き合っていくことが重要です。

NIPT(新型出生前診断)を受けて、その結果によってどのようにしていくのかという考えを両親で共有するのはもちろん、NIPT(新型出生前診断)を受ける前にも、妊娠前にもぜひ生まれて来る赤ちゃんに対する考え方を共有しましょう。
NIPT(新型出生前診断)は、生まれてくる赤ちゃんをどのようにサポートしていけばいいか?を少しでも長い時間考えることができるための手段とも言えます。ダウン症の子どもの教育体制、大人になってからの就労支援のことなど、生まれてくる前に調べられることもたくさんあります。こうした事前準備を行うための時間づくり=NIPT(新型出生前診断)とも言えるでしょう。

【参照文献】

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