受検者様からのご相談
「バニシングツイン※」 を経験しています。
※双胎妊娠をしている母親のお腹のなかで双胎一児死亡が起こり、そのまま消えたように見える現象のこと。
双胎(ツイン)のひとりが消えた(バニシング)ように見えることからこう呼ばれる。
実際には、亡くなったあと母親の子宮に吸収されていくため消えたように見える。
①もしNIPTで陽性だったら、成長を続けている赤ちゃんと亡くなった赤ちゃん、どちらの染色体異常だと考えたらよいですか?
また、
②陽性だったら「確定検査※」に進む必要があるそうですが、バニシングツインは確定検査の結果に影響しますか?
※「確定検査」……「絨毛(じゅうもう)検査」または「羊水検査」を指します。
ご相談をお受けして
妊娠初期に双胎と診断された方のうち、多くがその後バニシングツインとなります。
自然現象であり予防法はありません。
残念に思うと同時に、成長を続けておられる赤ちゃんのことが気がかりでNIPTに辿りつかれたことでしょう。
バニシングツインをご経験された場合、NIPT(新型出生前検査)の結果には注意が必要です。
・「一卵性双胎」の場合
・「二卵性双胎」の場合
それぞれで異なりますので、順にご案内します。
1.一卵性双胎のバニシングツインは検査に影響しない
一卵性双胎の場合は、亡くなった赤ちゃん、成長されている赤ちゃん、どちらも同じ結果だと考えられています。
1つの受精卵から発生する一卵性双胎は、同一の染色体情報(遺伝情報)を持っているためです。
▶︎NIPTの結果が「陰性」だった場合(一卵性双胎において)
NIPTの結果が「陰性」でしたら、亡くなった赤ちゃんも成長を続けている赤ちゃんも、「どちらも検査対象の染色体異常を有する可能性は低い」と考えられます。
NIPTは非確定検査であり、確定診断ができるわけではありません。
ただし、陰性だった場合の的中率(「陰性的中率」)は99.9%と高く、十分ご安心いただける結果だと判断されます。
確定検査に進む必要はありません。
今後は引き続き、妊婦検診での経過観察をなさってください。
▶︎NIPTの結果が「陽性」だった場合(一卵性双胎において)
万が一「陽性」の結果でしたら、亡くなった赤ちゃんも、成長を続けている赤ちゃんも、「どちらも検査対象の染色体異常を有する可能性がある」と考えられます。
しかし、NIPTはあくまで可能性に過ぎません。
陰性的中率とは異なり、陽性だった場合の的中率(「陽性的中率」)は高いとは言えない検査です。
「陽性的中率」は、何番の染色体か、また母体年齢がいくつかによって大きく変動するため、注意が必要です。
※例えば13番染色体の陽性的中率 は、母体年齢が30歳で4.5%、35歳で10.5%、40歳でしたら30.4%と報告されています。 (NIPTコンソーシアム資料より)
NIPTで陽性の結果が出ても、実際には染色体異常がない可能性も十分にあります。
したがってNIPTにて陽性だった場合には、確定検査にて確かめることが非常に大切です。
(平石クリニックまたは各提携院の受検者様は、確定検査の費用を全額負担いたします。)
なお、バニシングツインにおける確定検査への影響は考えなくてよいといわれています。
2.二卵性双胎のバニシングツインは注意が必要
続いて、二卵性双胎でバニシングツインとなった場合です。
▶︎NIPTの結果が「陰性」だった場合(二卵性双胎の場合)
結果が「陰性」でしたら、亡くなった赤ちゃんも、成長を続けている赤ちゃんも、「どちらも検査対象の染色体異常を有する可能性は低い」と考えられます。
前述の通り陰性だった場合の的中率は99.9%ですので、十分安心できる結果だと判断されます。
確定検査に進む必要はありません。
引き続き、妊婦検診での経過観察をなさってください。
NIPTの結果が「陽性」だった場合(二卵性双胎の場合)
一方、結果が「陽性」でしたら2つの可能性が考えられます。
◼︎ どちらも陽性
……成長を続けている赤ちゃんに染色体異常の可能性がある
◼︎ 亡くなった赤ちゃんのみが陽性
……成長を続けている赤ちゃんに染色体異常の可能性はない
後者は、例えば「亡くなった胎児が21トリソミー(ダウン症候群)、成長している胎児は正常な染色体、という場合でも、21トリソミー陽性となる可能性がある」ということです。
冒頭でもお伝えしました通り、胎内で亡くなった赤ちゃんDNAは、時間をかけて母体に吸収されていきます。
しかし完全に吸収されていない状態でNIPTを受けると、亡くなった赤ちゃんのDNAの影響を受ける可能性があるのです。(下記Topicご参照)
したがって、
● 「陽性的中率は高いとはいえない」という点(1.一卵性双胎ご参照)
● 二卵性双胎でバニシングツインとなった場合「亡くなった赤ちゃんの影響を受けている可能性がある」という点
これら2点を踏まえますと、やはりNIPTで陽性だった場合には確定検査が大切だと考えられます。
なお、二卵性のバニシングツインの場合も確定検査への影響は考えなくてよいといわれています。
では、バニシングツインが起こってからどの程度の期間をあければよいのでしょうか。
結論からお伝えしますと、どの程度で母体に完全吸収されるのか、現在でも明らかになっていません。
※解析を依頼している検査会社に確認したところ、一社からは「8週間はあけることが望ましい」、もう一社からは「できる限り期間をあけることが望ましい」との回答でした。
ただし、NIPTを受検される以上、万が一陽性だった場合には確定検査に進むことを踏まえておく必要性があります。
その点から遅くとも15週目までにNIPTを受検されることが望ましいと考えられます。
(詳しいスケジュールは「NIPTで陽性だったらどうしようと不安です ~解釈の仕方・今だからできること~」 をご参照ください。)
まとめますと以下の2点となります。
① バニシングツインとNIPTの観点からのみを考えると、
バニシングツインが起こってしばらく妊娠週数が経過してからNIPTを受検したほうが安心
② NIPTと、万が一NIPT陽性だった際の確定検査を考えると、
妊娠10〜15週目にはNIPTを受検しておいたほうが安心
相反する2点の狭間で悩まれるかもしれません。
しかし、
● 陰性でしたらより早く安心できること
● 万が一陽性だった場合には、弊社による全額費用負担があるなかで確実な結果(確定検査)を得られること
これらも含めて改めて比較しますと、②の妊娠15週目までにはNIPTを受検しておくほうがメリットが大きいといえるのではないでしょうか。
ご相談をふりかえり
本文の内容をおまとめします。
● 二卵性双胎でのバニシングツインの場合、陽性と出ても現在育っている赤ちゃんの情報とは限らない。
● バニシングツインによる確定検査への影響は考えなくてよい。
● 万が一陽性の結果が出ることを考慮した場合、NIPTは妊娠15週目までに受検されておくほうが安心。
以上の3点です。
なお妊娠初期にバニシングツインとなった場合、妊娠中期以降の場合と比べ、予後(たどる経過)は良好である可能性が高いといわれています。
とはいえ、くれぐれも無理をなさらず安静にお過ごしください。
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