妊娠何か月からが安定期?安心・安全な安定期の過ごし方

コラム

一般的に安定期ではつわりが解消し快適に過ごせるようになります。しかし母体は安定期の間にも刻々と変化していきます。妊娠前と同じように過ごすのは危険です。事前に母体の変化について知っておけば、安定期をより快適に過ごすことができますよ。母体にどのような変化があるのか。またその変化にどう対処したらいいのかをくわしく解説します。

妊娠の安定期はいつから?

妊娠中の安定期はいつからかご存じでしょうか。

一般的には妊娠5か月(妊娠16週)からが安定期とよばれています。

しかし、「安定期」という言葉は医学用語ではないため、正しく決められた期間があるわけではありません。ではなぜ妊娠5カ月ごろが安定期とされているのでしょうか。

胎盤の完成

妊娠5カ月になると胎盤が完成します。胎盤が完成するとあかちゃんに栄養や血液が安定して送られるようになります。それによって流産のリスクが下がり、あかちゃんが安定した状態になります。このことから妊娠5カ月ごろが安定期とされるようになりました。

戌の日の風習

また、日本には昔から「戌の日にさらしを巻く」という風習があります。

これは犬が多産・安産であることにあやかって妊娠五か月のはじめの戌の日にさらし(腹帯)を巻くという風習です。

ここから5カ月ごろを安定期と呼ぶようになったともいわれています。

安定期の母体の変化とその対処法

安定期という言葉には安心感がありますが無理は禁物です。安定期にもあかちゃんは成長し、それにともなって母体にも様々な変化があります。

ここでは安定期の母体にどのような変化があるのかと、その対処法について解説します。

体型がふっくらする

16週ごろでは洋服を着た状態では妊婦さんに見えないかもしれませんが、子宮の大きさは大人の頭のサイズくらいになっています。おへそのあたりまで子宮は広がってきています。

皮下脂肪もつきやすくなるためシルエットが丸くなってきます。

また、乳腺の発達にともない胸もふっくらとします。乳腺の急激な発達にともない1~2カップバストサイズがアップする場合もあります。

体をしめつけない工夫と妊娠線予防

乳腺を圧迫しないようマタニティ用のブラジャーなどを使用しましょう。

おなかや胸に妊娠線ができやすい時期にはいりますので、保湿クリームやオイルで乾燥対策もしておきましょう。

貧血になりやすい

あかちゃんに安定的に血液をおくるために、母体の血液量も増えます。しかし赤血球の数はあまり増えないため、貧血を起こしやすくなります。

動悸やめまい、頭痛がおこる場合もあります。

食事で貧血を予防しよう

食事では鉄分の摂取をこころがけましょう。あさりや大豆、緑黄色野菜、赤みの多い肉などを一品にくわえるのがおすすめです。

ただし、鉄分を多く含むレバーやうなぎにはビタミンAも多く含まれているのでご注意ください。あかちゃんに先天性の異常がおこる可能性があるので、これらの食材を一度に大量に摂取しないように心がけましょう。

お腹の張りを感じる

個人差がありますが、妊娠17週ごろからおなかに張りを感じる場合があります。これは子宮が収縮するためです。長時間歩いたり、体を冷やしてしまったときに一時的におなかの張りを感じる場合がありますが、これは生理的な収縮がほとんどです。安静にすれば自然と治ります。

また、子宮が大きくなるのにともなっておなかが突っ張るように感じる場合があります。これも痛みがなければ心配ないものがほとんどです。

■お腹の張り3つの予防法

おなかの張りの原因は「冷え」「ストレス」「過度な運動などによる疲れ」の3つです。これらを予防することでおなかの張りを抑えることができます。

①下半身が冷えないようにする

冷えによって下半身の血流が悪くなるとおなかの張りにつながります。夏でも油断せずに腹巻やソックスで冷えを予防しましょう。

②ストレスをためない

ストレスをかんじたら周りの人に相談しましょう。体型の変化など妊娠にともなう変化がストレスにつながる場合もあります。助産師さんなど経験豊富な人に相談するのがおすすめです。適度な運動もストレス発散になりますよ。

③過度な運動は控えて、疲れを感じたらすぐに休む

体調が安定しているからといって無理は禁物です。運動が激しくなりすぎないように心がけるとともに、疲れを感じたらすぐに休むようにしましょう。

強いおなかの張りや痛みをともなう出血はすぐに受診しましょう

痛みをともなう出血やおなかの張り、また周期的なおなかの強い痛みがある場合はすぐに病院を受診しましょう。「早産」「常位胎盤早期剥離」などの可能性があります。

便秘

子宮が大きくなることで腸が圧迫されて便秘になりやすくなります。腸が圧迫されていなくてもホルモンバランスの変化によって便秘になる場合があります。運動量が減少することで筋力が衰えて排便する力が弱まるなどの原因も考えられます。

■3つの便秘予防【水分・食事・運動】

①こまめな水分摂取

便秘解消には水分は必要不可欠です。こまめな水分補給で便秘を予防しましょう。

②健康的な食事

食物繊維や乳酸菌を摂取することで便秘を予防できます。積極的に食事にとり入れましょう。

③適度な運動

筋力が衰えないよう妊娠中でも週2~3回の軽い運動をとりいれましょう。

急激な体重増加

つわりが解消すると急激な体重増加につながる場合があります。

しかし、急激な体重増加には様々なリスクがあります。食べられるのは嬉しいですが、油断して食べ過ぎないようにしながら体重をコントロールしましょう。

安定期に入ってからの妊婦の過ごし方

適度な運動をとり入れる

体を動かさずにじっとしていると筋力の低下につながります。ストレス発散のためにも適度な運動をとり入れましょう。

産婦人科部会の『妊婦スポーツの安全管理基準』には以下3つの基準があります。

①心拍数150bpm以下の「ややきつい」以下の運動が望ましい

②週2~3回で一回の運動時間は60分以内

③仰向けになるような運動は避ける

ウォーキングやマタニティヨガ、マタニティビクス、マタニティスイミングなどの有酸素運動が安定期に向いている運動です。自宅でのストレッチや散歩にも十分な効果があります。ご自身にあった運動を無理のない範囲で継続しましょう。しかし仰向けでの運動は血流を圧迫するので避けましょう。

また、体調が悪いとき、運動をしている途中でおなかの張りを感じた時はすぐに運動を中断してください。妊婦さんご自身が「気持ちがいい」と感じることが一番大切です。

普通の食事にプラス1品

妊娠前や妊娠初期に比べて栄養を多くとることが推奨されています。

普通の食事をベースとして以下の量を増やしてみましょう。

主食の場合:おにぎり1個、食パン1枚

副菜の場合:具だくさんの味噌汁

主菜の場合:納豆1パック

乳製品の場合:ヨーグルト1パック、スライスチーズ1枚

果物の場合:みかん1個、梨半分

ストレスをためない

ストレスは全身の筋肉を硬直させます。これにより子宮が狭くなったり血流が悪くなったりするため、あかちゃんへの栄養を送りづらくしてしまう可能性があります。

またストレスによって早産や流産のリスクも高まるので、ストレスをためないように心がけましょう。パートナーと話し合いをもつ、相談先をもつ、適度な運動でストレスを発散するなど、ストレスをためない工夫をしていきましょう。

体に負担をかけない

安定期にはいると体調がよく快適にすごせる日が増えると思います。しかし、休憩や睡眠は積極的にとるように心がけてください。

また、抱き枕やクッションなどをつかって身体に負担がかからない生活を心がけましょう。

まとめ

安定期とはどんな時期なのか、身体の変化とその対処法、そして安定期を快適に過ごすための方法についてお伝えしました。何よりも妊婦さんご自身が「楽しい」「気持ちがいい」と思いながら過ごすことが一番大切です。ご自身にとって快適な食事や運動を心がけて、無理のない生活をしましょう。妊娠生活は人生においてもなかなかない期間です。ぜひこの限られた期間を楽しみながら、あなただけの大切な安定期をすごしてください。