NIPTの名称が変わる!?なぜ「診断」から「検査」に?

コラム

はじめに

現在、NIPTは別名「新型出生前診断」と呼ばれています。
厚生労働省はこのような呼び方は誤解を生む可能性があるため、「新型出生前検査」(または「出生前検査」)という呼び方に改めようとしています。
こちらのページではその理由も含め、解説していきたいと思います。


POINT
▶︎従来:「NIPT」「新型出生前診断
  ⬇︎
 今後:「NIPT」「新型出生前検査もしくは「出生前検査」

▶︎「診断」と「検査」の違い
通常の健康診断が最もイメージしやすいかと思います。
①一般的にまずはスクリーニング「検査」(※1)をします。
結果は可能性に過ぎません。
②検査にて要精密検査(あるいは陽性)だった項目のみ、後日改めて精密検査で「診断」をつけます。
結果は確定的です。

※1 スクリーニング検査:疾患の可能性がある人を見つけ出すこと。リスク評価。

NIPTの正式名称とは?

本来、NIPTの正式名称は「非侵襲性出生前遺伝学的検査」といいます。
分解して、その意味を考えてみましょう。

非侵襲性

 赤ちゃんやお母さんへのリスクはありません。

出生前

 赤ちゃんがお母さんのお腹にいる期間です。

遺伝学的

 特定の染色体に何らかの変異が起こっていないかどうかを診ます。(※2)

検査

 赤ちゃんの染色体疾患(染色体異常が原因となって起こる疾患)のリスクを評価するものです。

※2 NIPTはお母さんの血液を介して検査します。
赤ちゃん自身の染色体を検査するわけではないため、診断はつきません。

正式名称を紐解くだけでも、新型出生前「診断」と呼ばれているNIPTが実は「診断ではない」、ということがご理解いただけるかと思います。

厚労省が懸念している点①

NIPTが「診断」だと誤解されたまま世間に拡まっている点に関して、厚労省は頭を抱えています。

前述の通り、NIPTはリスク評価(すなわち染色体異常の可能性)に過ぎませんので、当然ながら「診断」はつきません
現に、NIPTは確定検査(結果は確定とはならない)、スクリーニング検査(※1)という位置付けです。

なお、誤解は妊婦様やパートナー様に限ったことではなく、しばしば医療関係者にもみられます。
それは無理もありません。
「診断と呼ばれていながら診断ではない」とは、誰も考えはしないでしょう。

誤解がもたらすリスク

誤解されるのも無理はない、とお伝えしました。
しかしお腹の赤ちゃんの命に関わることですので、この誤解は致命的です。
NIPTによる陽性結果だけで赤ちゃんを諦める判断をされる妊婦様・パートナー様もいらっしゃるからです。

NIPTの結果が陽性だったなら、お腹の赤ちゃんに染色体異常があるのだと断定的に捉え、絶望されるのです。

繰り返しますが、NIPTの陽性結果だけでは赤ちゃんに染色体異常があるとは言い切れません
したがってNIPTで陽性なら妊娠中断も視野にあるという場合、確定診断の必要性があります(※3)

※3 NIPTにおける「確定診断(確定検査、確定的検査)」とは、具体的に「羊水検査」もしくは「絨毛検査」を指します。


POINT

▶︎NIPT(新型出生前検査)で陽性の結果
  ⬇︎

●結果がどうあれ生みたいとお考えの場合
確定検査を受けずに経過観察をしていく。 or 確定検査で結果をはっきりさせた上で経過観察をしていく。

●生むのは難しいとお考えの場合
確定検査で確かめてから最終決断をする。
結果の正確な理解のため、認定遺伝カウンセラーとの無料電話相談を推奨いたします。
なお法律の規定上、妊娠中断の処置は21週6日までと定められています。)

ただしNIPTに続く更なる検査費用は、妊婦様の負担が倍増します。
そこで平石クリニックでは、NIPTにて陽性だった妊婦様には確定検査費用を全額負担いたしております。
費用のご心配なく、慎重なご判断をしていただきたいと考えます。

NIPTで陰性だった場合の的中率

NIPTの結果は、赤ちゃんが染色体異常をもつ可能性に過ぎないとお伝えしました。
とはいえ、陰性だった場合には十分ご安心いただけます。
なぜなら、陰性の的中率(=陰性的中率)は99.9%以上だからです。
母体年齢が何歳でも、どの検査項目でも変わりません

なおそれは、NIPTの特長でありどちらの検査施設で受検されても同じです。

つまり、結果が全ての項目で陰性でしたらそこで検査終了です。
通常の妊婦検診のみのご継続で十分だと考えられています。

問題は結果に陽性項目があった場合です。

NIPTで陽性だった場合の的中率

陽性項目があった場合、その陽性項目における的中率(=陽性的中率)は高くありません。
陽性的中率は、「母体年齢」「検査項目」によって異なるためです。
その幅は決して小さくありません。


陽性的中率は「母体年齢」や「検査項目」によって幅があるとお伝えしました。
その具体例をお示しします。

NIPTで陽性となる頻度が比較的高い、21・18・13トリソミーの中で比較してみます。
その中で最も陽性的中率の高い21トリソミーと、最も低い13トリソミーで比較するとその差がわかりやすいでしょう。

21トリソミー陽性の的中率
●母体年齢30歳……61.3%
●母体年齢35歳……80.0%
●母体年齢40歳……93.7%
※21トリソミーとは疾患名「ダウン症候群」のことです。

13トリソミー陽性の的中率
●母体年齢30歳……4.5%
●母体年齢35歳……10.5%
●母体年齢40歳……30.4%
※13トリソミーとは疾患名「エドワーズ症候群」のことです。

引用元:NIPTコンソーシアム(https://bit.ly/3BwZ1Pr)

このように、母体年齢が高くなるにつれて陽性的中率も上がることがお分かりいただけたかと思います。
とはいえ、21トリソミー陽性と出た40歳の妊婦様100人を集めたとして、6人の赤ちゃんは21トリソミーではないのです。

大切な赤ちゃんです。
NIPTの陽性結果だけで諦めてしまうことがないよう、くれぐれも慎重なご判断が求められます。


なお、2013年に日本でNIPTが開始されてから、早10年近くが経とうとしています。
従来の出生前検査との差別化をはかるためにマスコミが「新型」と付けた呼称ですが、それももはや相応しくないのではという意見もあります。

NIPTは、超音波検査やクアトロテストと同じく「出生前検査」と呼ばれる検査のひとつです。
したがってNIPTも「新型」という言葉を除いて、広く「出生前検査」という呼称でもよいのではという意見も挙がっています。

世間を脅かしている「新型コロナウイルス」も、いつまでも「新型」と呼ばれ続けるかというと、おそらくそうではないでしょう。
どちらにせよ、こちらに関しては私たちに影響を及ぼしません。

まとめ

重要なのは、誤解をこれ以上生まないよう、診断ではない「検査」は正しく「検査」と呼称することだと考えます。
つまり妊婦様やパートナー様、赤ちゃんを想うと、厚労省の指摘通り「NIPT」=「新型出生前検査」と正しい呼称で認知されていくことが大切です。

そのような考えから、こちらの“妊娠中のお悩み”ページでは当初から「新型出生前検査」という表記で統一しております。
平石クリニック全体としても順次「新型出生前検査」という呼称に統一していきたいと考えています。

当院を筆頭に、徐々に業界全体も変わっていくこと、そして妊婦様に常に正しい最新情報が伝わることを願っております。

またNIPTは、採血のみで済むお手軽な検査でありながら、一定数の妊婦様が陽性の結果に狼狽えてしまうのも事実です。
軽い気持ちで受検されることはお勧めできません。

些細なご質問と思われるようなことでも、どうぞお気軽にお問合せください。
NIPTをご希望の妊婦様が、ご納得、熟知の上でご受検できることが大切です。

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